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LCA(ライフサイクルアセスメント)とは?メリットや事例をご紹介

2022.8.4

公開:2021年05月24日
更新:2022年08月04日

LCA(ライフサイクルアセスメント)とは、製品やサービスの環境負荷を多角的に定量化する評価手法であり、この評価はCO2排出削減を考える上で非常に重要です。

この記事ではLCAが近年注目される理由やLCAの具体的な取り組みを解説します。

LCA(ライフサイクルアセスメント)とは?わかりやすく解説

LCA(ライフサイクルアセスメント)とは、工業製品や農業製品(またはサービス)が作られ、その役目を終えるまでに辿る一連の流れ(ライフサイクル:Life Cycle)を、評価や査定(アセスメント:Assessment)することです。

LCAでは、製品やサービスの原料調達から、生産、流通、廃棄、リサイクルまで含めたすべてのライフサイクルで生じる環境負荷を、総合的・定量的に評価します。

従来の環境負荷評価は、製品やサービスの生産工程のみが対象であり、また定量的ではない評価方法がほとんどでした。例えば「古紙や廃棄プラスチックをリサイクルしているため環境にやさしい」と謳う製品は多くありますが、一方で、廃棄された古紙やプラスチックを回収してリサイクルするほうが、新しく製品を作るよりも多くのエネルギーを消費し、より多くのCO2を排出している場合もあります。

また、太陽電池の場合では、設置後のエネルギー生産だけを考えれば、究極のエコロジー製品といえますが、太陽電池の製造工程において、その原料となるシリコンの精製には、大量の電力を消費します。

製品のすべての工程を包括的に評価すれば、ライフサイクルのどの段階で環境負荷が高く、どこを対策すれば真に地球環境への影響が小さい製品とすることができるかを見極めることができます。また、消費者は、どちらの製品のほうが、環境負荷が低いのかを判別することができます。

環境負荷は一方面からのみではなく、生産から廃棄まですべての工程を総合的に評価しなければなりません。LCAは、こうした包括的評価を目的とします。

製品のリサイクルイメージ


LCAの実施手順や規格は様々ですが、自社の環境活動を、対外的に信頼性をもってアピールするためには、ISOのような一般的な規格に基づいてアセスメントを実施することが重要です。

ISO14040にはLCAの手順が国際規格として定められていますので、LCAに取り組む場合には、まず、ISO14040を参照すると良いでしょう。簡単にまとめると、LCAは以下の手順で実施されます。

  1. ライフサイクルプロセスの細分化
    どのようなLCA規格でも、まずは製品の一生を、原料の調達・輸送・工場での生産・消費・処分といった形で「漏れなく・重複なく」細分化します。
  2. 各プロセスにおけるインプット・アウトプット項目の算出
    各プロセスにおけるインプットとは、原材料・電力・燃料などを指し、アウトプットとは廃棄物・CO2・SOx・NOxなどを指しています。
  3. 各項目の環境負荷算出
    インプットとアウトプットを整理したら、それぞれの環境負荷を算出します。

ここで、インプットに貴重な動植物やレアメタルを利用すれば、環境資源の残存量を減らすこととなり、またアウトプットとしてSOxやNOxを排出すれば、酸性雨などのリスクが高まるなど、環境負荷が高くなると解釈できます。

LCAの重要性と普及の背景

近年のLCAに対する大きな期待は、気候変動や環境汚染対策への関心が世界中で高まっていることに起因します。2015年には、「国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)」にて、各国のCO2排出量削減を目的に「パリ協定」が採択され、日本も協定に参加しました。

パリ協定について詳しく知りたい方は「パリ協定とは?日本の取り組みやアメリカ離脱の経緯をわかりやすく解説」をご参照ください。

パリ協定を受けて、国内では「カーボン・オフセット」や「余剰電力売買」などに関する様々な法制度策定が進められています。LCAもこれら環境負荷低減のための取り組みのひとつです。

カーボン・オフセットについては「カーボン・オフセットとは?必要性や企業の取り組み事例をわかりやすく解説」を、売電については、「【売電情報まとめ】太陽光の売電価格、期間、FIT終了後の対応を解説」をそれぞれご参照ください。

加えて、近年では「製造者にこれまでより大きな責任を課す」という考え方に徐々にシフトしています。2001年に施行された「循環型社会形成推進基本法」では、生産者が、その製造段階だけでなく使用後(廃棄やリサイクル)の環境負荷の低減についても一定の責任を負うという内容が付されました。

提供した製品を通して事故が発生した場合、事故を起こした利用者のみならず、製品を製造した側にも一定の責任があるという考え方です。

環境負荷の評価や判断を国や消費者に委ねるのではなく、生産者一人ひとりが製品の環境影響を考えるべき社会となりました。LCAは生産者が自社製品の環境負荷を見つめ直すことにも大きく貢献します。

自社製品の環境影響を考える

LCA(ライフサイクルアセスメント)を実施するメリットは?

先述の通り、LCA最大のメリットは、生産者である企業が、自社製品やサービスの環境負荷を見つめ直し、改善への第一歩を踏み出せることです。ライフサイクルを細分化すれば、どのプロセスで環境負荷が高いのかを可視化することができます。

また、各社がLCAを公開すれば、自社製品やサービスの環境負荷を業界平均と比較して評価し、改善の可能性を見出すことができます。加えて、LCAは環境負荷を定量化するため、「~%のCO2排出削減のためには、これくらいのコストが必要」というような数値に基づく合理的な判断が可能になるでしょう。

LCAは消費者にも有益な情報を提供します。同じ品質・同等の価格で提供されるサービスに対して、「包括的環境負荷」という新たな尺度で製品を選択できるようになるためです。消費者の環境意識が高まれば、上辺だけのパッケージに惑わされることなく、環境負荷の小さな製品が選択的に購入・利用されるようになることが期待されます。

LCA(ライフサイクルアセスメント)に取り組む企業を紹介

続いて、国内のLCAへの取り組み紹介いたします。

マツダ

自動車販売大手のマツダは、車のライフサイクルの違いによる環境負荷の影響について研究を実施しました。研究の成果として代表的なものは、電気自動車とガソリン車との比較です。走行距離が10万km程度まではガソリン車の方がCO2の総排出量が少なく、以降は電気自動車のほうがCO2の総排出量が少なくなります。ライフサイクル全体でのCO2排出量をみた際に、10万km以上の走行をしなければ、電気自動車はガソリン車よりも環境負荷が高いことを意味します。

そのほかにも、生産地域の電力状況や燃費、生涯走行距離など様々な違いを考慮したLCAを実施し、細かな条件出しを行っています。この研究により、地域ごとの特色を生かした環境負荷の小さな自動車生産や、顧客に合った車種の提案が可能となりました。

Allbirds

Allbirdsは、スニーカーの製造販売メーカーであり、環境負荷対策において高い評価を受けているブランドです。Allbirdsはライフサイクルを評価するツールを独自開発し、自社で扱う全製品のカーボンフットプリント(ライフサイクルにおけるあらゆる温室効果ガスの排出量をCO2の排出量に換算したもの)をネット上で公開しており、誰でも確認することができます。

Allbirdsスニーカーのカーボンフットプリント排出量平均値は7.6kgであり、これはスマホ充電の967回分、ガソリン車で30km走行分、洗濯乾燥機5回分に相当する量です。こうした取り組みは、消費者が自身の選択によって生み出す環境負荷を意識することに繋がり、環境問題への関心を高めることにも寄与しています。

スニーカーのリサイクル

日立製作所

日立製作所の情報・通信グループでは、製造業や運輸業、飲食業などの様々な業種に向けたサービス・ソリューションごとにCO2排出量削減効果を明示し、利用者がCO2排出量を削減することに貢献しています。排出量削減効果を算出する際には、ライフサイクルアセスメントの手法を用いて評価がされています。

LCA(ライフサイクルアセスメント)の今後の課題と展望

LCAの活用によって、企業は自社製品やサービスの環境活動を見直し、消費者は環境負荷の低い製品やサービスを選択することが可能となります。しかし、そのためにはLCAという考え方が業界や消費者に浸透しなければなりません。LCAの結果を公表する企業が増えれば、業界平均と比較して、自社における環境負荷の改善が図りやすくなります。

ここで、もし業界のLCAと自社が使うLCAの規格が異なれば、環境負荷の影響を他社と比較することができず、その信頼性を損なう可能性があります。自社の環境負荷を相対的に評価するためには、業界の中で信頼性のあるLCA規格を採用することが重要です。

国内であれば、一般社団法人サステナブル経営推進機構(SuMPO)が主導し、全ライフサイクルステージにわたる環境情報を定量的に開示した製品に「エコリーフ」と呼ばれるラベルの貼付を認めています。業界としてLCAに関する特別な決まりが無いならば、エコリーフの活用から始めてみてはいかがでしょうか。

エコリーフマーク
図:一般社団法人サステナブル経営推進機構(SuMPO)が認証するエコリーフマーク

また、ISO14040にはLCAの手順が国際規格として定められていますが、CO2の算出方法が詳細に規定されているわけではありません。

LCAの実施を検討する企業等がこのような既存の手順をみても、「やり方が分からない」「データを集めるのが大変」と感じる企業等も少なくないようです。

三井物産では、このような悩みを抱える企業に対して、一般社団法人サステナブル経営推進機構(SuMPO)と共同開発した製品単位の温室効果ガス(Greenhouse Gas、以下「GHG」)排出量を可視化するプラットフォーム”LCA Plus”のサービスを開始しました。LCA Plusでは、これまで企業全体や工場単位で算出していたCO2排出量を、各プロセス単位や製品単位にまで細分化し、精緻な可視化が可能となります。

詳細は「製品単位の温室効果ガス排出量可視化プラットフォーム「LCA Plus」|三井物産」をご覧ください

今後、このような算定ツールを活用して、より簡単に、より精緻にLCAを実施する企業が増えていくことが予想されます。

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