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ライフサイクルアセスメント(LCA)とは?概要と事例をご紹介

2021.5.24

ライフサイクルアセスメント(LCA)とは、製品やサービスの環境負荷を多角的に定量化する評価手法であり、この評価はCO2排出削減を考える上で非常に重要です。

この記事ではLCAが近年注目される理由やLCAの具体的な取り組みを解説します。

ライフサイクルアセスメント(LCA)とは?

ライフサイクルアセスメント(LCA)とは、工場製品や農業製品(またはサービス)が作られ、その役目を終えるまでに辿る一連の流れ(ライフサイクル:Life Cycle)を、評価や査定(アセスメント:Assessment)することです。製品やサービスの原料調達から、生産、流通、廃棄、リサイクルまで含めたすべてのライフサイクルで生じる環境負荷を、総合的・定量的に評価する方法のことです。

従来の環境負荷評価は生産工程しか考慮せず、定量的でない評価方法がほとんどでした。例えば「古紙や廃棄プラスチックをリサイクルしているため環境にやさしい」と謳う製品は数多くありますが、実際には、廃棄された古紙やプラスチックの回収にもエネルギーを消費し、原料から作るよりリサイクルする方がCO2を多く排出している可能性もあります。こういった製品のすべての工程を包括的に評価すれば、真に地球環境への影響が小さな製品は、リサイクル製品ではない可能性があります。

太陽電池も設置後のエネルギー生産だけを考えれば、究極のエコロジー製品といえますが、太陽電池の製造工程において、その原料となるシリコンの精製には、大量の電力を消費します。環境負荷は一方面からのみではなく、生産から廃棄まですべての工程を総合的に評価しなければなりません。LCAは、こうした包括的評価を目的とします。

製品のリサイクル


LCAの実施手順や規格は様々ありますが、基本的な手順は以下の3点となります。

  1. ライフサイクルプロセスの細分化
  2. 各プロセスにおけるインプット・アウトプット項目の算出
  3. 各項目の環境負荷算出

どのようなLCA規格でも、まずは製品の一生を、原料の調達・輸送・工場での生産・消費・処分などへ「漏れなく・重複なく」細分化していきます。各プロセスにおけるインプットとは原材料・電力・燃料などを指しており、アウトプットとは廃棄物・CO2・SOx・NOxなどを指しています。貴重な動植物を原材料として利用することで、環境資源残存量を減らし、SOxやNOxを排出すれば酸性雨などのリスクが高まります。

LCA普及の背景

近年のLCAに対する大きな期待は、気候変動や環境汚染対策への関心が世界中で高まっていることに起因します。2015年には、「国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)」にて、各国のCO2排出量削減を目的に「パリ協定」が採択され、日本も協定に参加しました。

パリ協定について詳しく知りたい方は「パリ協定とは?日本の取り組みやアメリカ離脱の経緯をわかりやすく解説」をご参照ください。

パリ協定を受けて、国内では「カーボン・オフセット」や「余剰電力売買」などに関する様々な法制度策定が進められています。LCAもこれら環境負荷低減のための取り組みのひとつです。

カーボン・オフセットについては「カーボン・オフセットとは?必要性や企業の取り組み事例をわかりやすく解説」を、売電については、「【売電情報まとめ】太陽光の売電価格、期間、FIT終了後の対応を解説」をそれぞれご参照ください。

加えて、近年では「製造者にこれまでより大きな責任を課す」という考え方に徐々にシフトしています。2001年に施行された「循環型社会形成推進基本法」では、生産者が、その製造段階だけでなく使用後(廃棄やリサイクル)の環境負荷の低減についても一定の責任を負うという内容が付されました。

核兵器によるジェノサイドの責任は原子力開発を進めた科学者にもあるだろう、という考え方です。民生品だとしても、環境負荷の評価や判断を国と消費者に委ねるのではなく、生産者一人ひとりが製品の環境影響を考えるべき社会となりました。LCAは生産者が自社製品の環境負荷を見つめ直すことにも大きく貢献します。

自社製品の環境影響を考える

ライフサイクルアセスメント(LCA)を実施するメリットは?

先述の通り、LCA最大のメリットは、生産者である企業が自社の生産活動を見つめ直し、改善への第一歩を踏み出せることです。ライフサイクルを細分化すれば、どのプロセスで環境負荷が高いのかを可視化することができます。

また、各社がLCAを公開すれば、自社のプロセスを業界平均と比較して評価し、改善の可能性を見出すことができます。加えて、LCAは環境負荷を定量化するため、「~%のCO2排出削減のためには、これくらいのコストが必要」というような数値に基づく合理的な判断が可能になるでしょう。

LCAは消費者にも有益な情報を提供します。同じ品質・同等の価格で提供されるサービスに対して、「包括的環境負荷」という新たな尺度で製品を選択できるようになるためです。上辺だけのパッケージに惑わされることなく、真に環境負荷の小さな製品が選択される可能性が増します。

企業のライフサイクルアセスメント(LCA)への取り組みを紹介

続いて、国内のLCAへの取り組み紹介いたします。

マツダ

自動車販売大手のマツダは、ライフサイクルの違いによる環境負荷の影響について研究を実施しました。研究の成果として代表的なものは、電気自動車とエンジン車との比較です。走行距離が10万km程度まではエンジン車の方がCO2の総排出量が少なく、以後、電気自動車に軍配が上がります。

そのほかにも、生産地域や乗り手の生活スタイルに関する様々な違いを考慮したLCAを実施し、細かな条件出しを行っています。この研究により、地域ごとの特色を生かした環境負荷の小さな自動車生産や、顧客に合った車種の提案が可能となりました。

Allbirds

Allbirdsはスニーカーの製造販売メーカーであり、環境負荷対策において高い評価を受けているブランドです。Allbirdsはライフサイクルを評価するツールを独自開発し、自社で扱う全製品のカーボンフットプリント(ライフサイクルにおけるあらゆる温室効果ガスの排出量をCO2の排出量に換算したもの)をネット上で公開しており、誰でも確認することができます(Allbirdsウェブサイト)。

Allbirdsスニーカーのカーボンフットプリント排出量平均値は7.6kgであり、これはスマホ充電の967回分、ガソリン車で30km 走行分、洗濯乾燥機5回分に相当する量です。こうした取り組みは、消費者が自身の選択によって生み出す環境負荷を意識することに繋がり、環境問題への関心を高めることにも寄与しています。

スニーカーのリサイクル

LCAの課題と展望

LCAの活用によって、企業は自社の生産活動を見直し、消費者は環境負荷の低い行動を選択することが可能となります。しかし、そのためにはLCAという考え方が業界や消費者に浸透しなければなりません。LCAの結果を公表する企業が増えれば、業界平均と比較して自社環境対策事業の改善を実施しやすくなります。そのためには、業界の中で統一されたLCAの規格に各企業が準じることが重要です。業界のLCAと自社が使うLCAの規格が異なれば、環境負荷の影響を他社と比較することができません。

国内であれば、一般社団法人サステナブル経営推進機構が主導し、一定の規格に則った製品に「エコリーフ」と呼ばれるラベルの貼付を認めています。業界としてLCAに関する特別な決まりが無いならば、エコリーフの活用から始めてみてはいかがでしょうか。

エコリーフマーク

図:エコリーフマーク(一般社団法人サステナブル経営推進機構)



LCAに関する取り組みは、社会一般に広く認知され、エコリーフのような統一的な規格が普及すればするほど効果が高まります。ただしこれらを普及するためには、正確な調査が必要となり、自社の生産活動を精密に調査するためには、時間も人手も必要で、生産者側が取り組む際に足踏みをする理由にもなっています。

今後、LCAをより一層普及させるためには、環境負荷を簡易に計算するための企業努力だけでなく、LCA実施のためのツールやサービスの拡充が求められます。

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