脱炭素社会への取り組みは必要?私たち個人でもできる対策を紹介
2021.4.20

世界各国で「脱炭素社会の実現」に向けた取り組みが進められていますが、なぜ脱炭素社会を目指す必要があるのでしょうか?
この記事では、脱炭素社会への取り組みの必要性や日本が掲げた脱炭素社会を実現するための目標、私たち個人でもできる取り組みや企業・自治体の活動などについて紹介しています。
脱炭素社会の実現への取り組みがなぜ必要なのか
世界中で平均気温の上昇が続いています。日本でもこの100年間で平均気温が1.24℃上昇したと報告されています。これは、地球温暖化とよばれる現象です。
地球温暖化が進行すると、巨大台風や干ばつなどの異常気象の発生、環境が変化することによる野生動物の絶滅や食糧難などが起こると予想されています。
日本でも、台風の大型化や豪雨などによる被害が出ており、地球温暖化との関連が指摘されています。
地球温暖化の原因と考えられているのが、二酸化炭素などの温室効果ガスです。
温室効果ガスは大気中に熱をため込む性質があり、大気中の温室効果ガスの増加が、地球温暖化を引き起こしていると考えられています。
大気中の温室効果ガスの増加の原因は、化石燃料(石油や石炭)の燃焼など人間活動によるものが大きく、火力発電所は化石燃料を燃焼させて電気エネルギーを得ていますし、車もガソリンなどの化石燃料を燃焼させて動いています。身の回りのプラスチック製品は化石燃料からつくられており、燃やせば二酸化炭素が発生します。
産業革命以降、私たちの活動によって大気中の温室効果ガスは年々増加しています。そのため、温暖化を防ぎ持続可能な世界を実現するためには、温室効果ガスの排出削減が求められています。

日本の実現目標は?
世界中で温室効果ガスを削減するための努力が行われています。2015年に締結されたパリ協定では、世界196か国が参加し、
- 気温の上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力
- 出来る限り早期に世界の温室効果ガスの排出量をピークアウトし、今世紀後半に人為的な温室効果ガスの排出と吸収源による除去の均衡の達成
が取り決められました。
パリ協定については「パリ協定とは?日本の取り組みやアメリカ離脱の経緯をわかりやすく解説」でくわしく紹介していますので参考にしてみてください。
パリ協定をふまえ、日本では、2020年10月26日に行われた菅内閣総理大臣の所信表明演説で、「2050年に脱炭素社会の実現を目指す」と宣言されました。
脱炭素社会とは、二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出が全体として0(カーボンニュートラル)の社会のことです。
中期目標として温室効果ガスの排出量を2030年度までに26%削減、長期目標として温室効果ガスの排出量を2050年までに80%削減することが掲げられています。
また、環境省は「地球温暖化対策の推進に関する法律」を一部改正し、2050年までに脱炭素社会を実現するという目標を記載する方針です。
脱炭素社会を実現する個人の取り組み
脱炭素社会の実現には、政府だけでなく個人の取り組みも大切です。私たちにもできることがたくさんありますのでご紹介します。
日常生活の中でのエネルギーの見直し
私たちは日常生活の様々な部分でエネルギーを消費しています。身近なエネルギーを見直すことで、二酸化炭素の排出削減につながります。
私たちの日常生活でもできることとしては
- マイカーを利用せず公共交通機関を利用する
- エアコンの温度調節やクールビズ、ウォームビズの着用を心がける
- レジ袋からエコバックへ替える
- ごみを少なくする、分別をしっかり行う
- お風呂の水で洗濯する
などがあげられます。
公共交通機関は一度に多くの人を運べるので、ガソリンなどの燃焼に由来する二酸化炭素の排出を抑制することができます。
エアコンの温度調節や、クールビズ・ウォームビズの利用で電力の消費を抑えることも、温室効果ガスの排出削減につながります。
買い物で使うレジ袋をエコバックに替えるのも、身近にできる二酸化炭素の排出削減です。レジ袋本体は石油化学製品で、燃やせば二酸化炭素が排出されます。また、レジ袋の製造・輸送過程にも化石燃料を使うので、これらの削減にもつながります。

ごみを少なくする、分別をしっかり行うことも大切です。ごみを燃やせば二酸化炭素が発生するので、ごみを少なくすればその分、二酸化炭素の排出を減らせます。分別をしっかり行い、プラスチックなどをリサイクルに回すことも二酸化炭素の排出を抑制するうえで大切です。
意外かもしれませんが、洗濯にお風呂の残り湯を使うことも二酸化炭素の削減につながります。ご家庭に供給される水は、浄水場でのろ過やポンプでの水の汲み上げ・送水などに多くの電力を消費しています。洗濯機に使う水をお風呂の残り湯にすれば、水道代はもちろん、二酸化炭素の排出削減にもつながります。
設備や製品の見直しを行う
日常生活での工夫に加えて、設備や製品の見直しも大切です。
たとえば、車を購入する際には二酸化炭素排出量の少ないエコカーを選ぶ、家電の買い替えでは省エネ家電を選ぶ、家の電灯をLEDにする、など設備や製品を購入、買い替えるときには二酸化炭素の排出量にも気をつけてみてはいかがでしょうか。
最近では「ZEH(ゼッチ)住宅」というものも登場し、経済産業省、環境省、国土交通省が連携して普及を進めています。
ZEHは、「Net Zero Energy House」の略称です。高断熱や省エネの設備によってエネルギーの消費を減らし、かつ太陽光発電などを住宅に導入してエネルギーをつくりだします。つくりだすエネルギーの量が消費されるエネルギーの量とつり合う、または上回ることを実現した高性能な住宅がZEHです。
ZEHについては「ZEH(ゼッチ)ってなに?補助金をもらう条件や住宅への導入事例を解説」にくわしい解説がありますので、ご参照ください。
また、家庭内の電力消費を可視化する「HEMS」とよばれるシステムがあります。HEMSについてくわしくは「HEMS(ヘムス)とは?家庭の電気消費を把握して省エネ!」をご覧ください。
脱炭素社会を実現する企業の取り組み
続いて、実際に脱炭素社会実現のための取り組みを行っている企業や自治体と、その活動についてご紹介します。
RICOH
RICOHは日本企業ではじめて「RE100(Renewable Energy 100%)」に参加しました。
RE100は国際的なイニシアティブで、AppleやGoogleなど、世界の名だたる企業が参加しています。RE100に参加する企業は、その事業で使用する電力を100%再生可能エネルギーでまかなうことを目標とし、これに取り組んでいます。
RICOHは脱炭素社会の実現を重要課題と位置づけ、室内照明など微弱な光源下でも効率よく発電できる「完全固体型色素増感太陽電池」の開発や、木質バイオマス利用の循環モデル「御殿場モデル」の構築と普及に努めるなど、脱炭素社会の実現に向けた技術開発や取り組みに意欲的です。
また、最先端の高効率な環境設備・技術を自社に導入して省エネに努め、省エネモデルの事業所として建設した岐阜の新社屋は「Nearly ZEB*」を取得するなど、自社の環境改革・意識改革も積極的に行われています。
*ZEB(Net Zero Energy Building)は、省エネと創エネによってエネルギーの収支を0にした建物。Nearly ZEBはエネルギーの収支が0に近い状態で、ZEBに近い建物のこと。
滋賀県湖南市
SDGs未来都市に選定され、ゼロカーボンシティの宣言を行っている滋賀県湖南市では、脱炭素社会の実現のために積極的な取り組みが進められています。
モデルとなっているのはドイツの「シュタットベルケ」。シュタットベルケは、電気や水道、ガス、交通などの地域の公共サービスを担う、自治体主体の公的な会社・企業です。
その中心にあたるのが自治体地域新電力会社「こなんウルトラパワー株式会社」です。湖南市が出資するこなんウルトラパワーは、地域の自然エネルギーを活用した電力事業をはじめ、まちづくりや地域の活性化を目的とし、湖南市各地に太陽光発電事業、省エネ改修事業などを展開しています。
湖南市版の「シュタットベルケ構想」が目指すのは、こなんウルトラパワーを核とした「地域循環共生圏」です。こなんウルトラパワーの収益をもとに、公共サービスの改善など地域の課題解決につながる事業を展開しつつ、地域の活性化と安全で持続可能な街づくりの推進に取り組んでいます。

北海道下川町
2018年、北海道下川町は、SDGsを取り入れた「2030年の下川町のありたい姿」を策定しました。ありたい姿には7つの目標が設定され、このうちの2つ「人も資源もお金も循環・持続するまち」「世界から目標とされるまち(脱炭素社会・SDGsへ寄与)」を実現するために、2019年に「下川町再生可能エネルギー導入促進ロードマップ」を打ち出しました。
町の面積の9割を森林が占める下川町では、豊かな森林資源を活かし、木質バイオマスボイラーの導入・普及など木質バイオマスの利用、エネルギーの地産地消が進められています。
具体的には、熱供給を従来の化石燃料から木質バイオマスに切り替えることで燃料費を大幅に削減させ、これによって子育て支援等の公共サービスの充実が可能になりました。
ロードマップでは、太陽光発電や風力発電などの導入も行われていく予定で、町内の資源を有効に利用し、脱炭素社会の実現に寄与していく考えです。
地球温暖化による気候変動や野生動物の絶滅、食糧難などを可能な限り回避するため、二酸化炭素など温室効果ガスの削減が急務となっています。
2050年の脱炭素社会の実現に向け、私たちの普段の生活を見直すことも大切です。企業や自治体なども脱炭素社会の実現に向けた取り組みを行っています。
温室効果ガスの削減は国際社会全体での取り組みがなければ解決できない課題であり、日本もその一員として必要な役割を果たしていくことが求められています。