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水素バリューチェーン推進協議会とは?目的や活動内容をご紹介

2023.1.13

公開:2021年10月29日
更新:2023年1月13日

水素社会の実現を目的とし、民間企業と政府、自治体が協力して議論していく場として発足した水素バリューチェーン推進協議会。水素バリューチェーン推進協議会では、水素の社会実装に向けたプロジェクトの創出や政策提言、国内外での情報収集や発信が行われています。

この記事は、水素バリューチェーン推進協議会の目的や参加企業、具体的な活動内容などを解説しています。

水素バリューチェーン推進協議会とは?概要と会議の目的を紹介

水素は、エネルギー源として利用しても温室効果ガスを排出しないため、地球温暖化対策、脱炭素社会の実現に重要な資源です。

水素バリューチェーン推進業議会は2020年12月7日に発足した新しい機関で、水素エネルギーの普及に向けてさまざまな業界が情報交換や議論をし、政府への提言を行っています。

水素バリューチェーン推進協議会設立の背景や目的

水素バリューチェーン推進協議会が設立された背景は、おもに2つあります。

1つめは、水素社会実現への取り組みが世界で加速していることです。
欧州では、2019年に欧州グリーンディールが提唱されました。その中で2050年のCO2排出を実質ゼロにし、気候中立を実現することを目標に掲げています。目標達成にむけて水素エネルギーの活用への期待が高まっており、2020年には水素エネルギー戦略を決定し、水素社会実現に向け本格的に始動しています。

今後も脱炭素社会の実現に向け、水素の重要性はますます大きくなっていく事が予想されます。日本でも、水素エネルギーの普及を促進し、水素社会の実現を目指す必要があります。

脱炭素社会の実現

2つめは、水素社会構築に向けた課題を、横断的な取り組みで解決できる団体が必要だったことが挙げられます。

これまでにも、水素社会の実現に向けた取り組みは行われてきました。例えば、三井物産では、水素の製造や輸送、水素ステーションの設置といった水素バリューチェーンに関する取り組みを進めています。

詳しくは「水素関連ソリューション – Green&Circular 脱炭素ソリューション|三井物産」をご確認ください。

しかし、こうした社会実装のためには官民の連携が欠かせません。政府が水素社会実現を強力に後押ししたヨーロッパとは異なり、国内では社会実装に向けたインフラ整備が不十分です。結果として、未だ市場は未熟であり、水素エネルギーの普及は充分に進んでいません。

特にプロジェクトの初期段階において、民間事業者だけで進めることは困難です。よって、民間企業と国、地方自治体などが協力し、一体となって水素社会の実現に取り組むことが必要であり、そのために設立されたのが、水素バリューチェーン推進協議会です。

水素社会構築への道

水素バリューチェーン推進協議会の目的は、サプライチェーン全体を俯瞰し、民間企業と国、地方自治体などが協力して水素エネルギーの普及に努め、早期に水素社会を構築することです。温室効果ガスを排出せず、資源量も豊富なことから注目を集めている水素。水素は、持続可能な社会を築いていくために、その重要性はますます高まっていく事が予想されます。現在も多くの産業で利用されていますが、社会実装の実現には課題があります。水素社会を実現すべく、水素バリューチェーン推進協議会は業界横断的かつオープンな組織として活動しています。

なお、水素エネルギーについては、「水素エネルギーとは?メリットや課題、将来性、企業の事例を解説!」で詳しく解説しています。

水素バリューチェーン推進協議会に参加している企業

水素バリューチェーン推進協議会は、トヨタ自動車やENEOS、東芝などの9社を中心に準備委員会が構成され、一般会員79社と共に2020年12月に設立されました。また、準備委員会の9社がそのまま理事会員となりました。

設立時の理事会員は次の通りです。

  • 岩谷産業
  • ENEOS
  • 川崎重工業
  • 関西電力
  • 神戸製鋼所
  • 東芝
  • トヨタ自動車
  • 三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)
  • 三井物産

その後、大林組やクボタ、住友商事、パナソニックなどが理事会員として加わり、9社だった理事会員は2022年11月の時点で23社に増加。一般会員としても企業207社が参画しています。

加盟している自治体や大学

水素バリューチェーン推進協議会に参加しているのは民間企業だけではありません。より幅広い技術や意見を取り入れるため、地方自治体や大学の参加も増加しています。

地方自治体では、大阪市や福岡市、神奈川県など44団体が水素バリューチェーン推進協議会に参加しており、大学としては、九州大学や京都大学、上智大学、東北大学、山梨大学など13団体が参加しています。

水素エネルギーを普及させ、水素社会を実現するためには、コストの削減や安全性の確立などに関する新しい取り組みと技術革新が必要不可欠です。加盟している地方自治体や大学は、こうした課題解決のために取り組んでいます。

たとえば2004年に「水素利用技術研究センター」を設置し、水素研究をいち早く開始した九州大学では、燃料電池の研究や、水素を安全に使用するための材料の研究などが行われています。燃料電池は、水素と酸素の化学反応により電力と熱を発生しますが、その過程で温室効果ガスは発生しません。そのため工場や自動車、家庭用などへの実用化が進められており、エネルギーシステム全体を変える可能性をもっています。

また、水素は最も分子が小さく、材料に溶け込んで悪影響を与えやすいことから、安全に使用するための材料の研究も進められています。

安全に使用するための努力

水素バリューチェーン推進協議会の活動内容

水素バリューチェーン推進協議会は、理事会員と一般会員による総会を年に1、2回、理事会を4半期に1回程度開催しており、重要事項や運営について議論しています。続いて、水素バリューチェーン推進協議会の具体的な活動内容や実績について紹介します。

活動内容と実績

水素バリューチェーン推進協議会のおもな活動は、大きく分けて次の3つです。ここでは、これまでに取り組まれた実績も合わせてご紹介します。

  1. 社会実装プロジェクトの創出
    具体的には、地方自治体と連携して特区制度を活用する「地産地消型プロジェクト」、海外での水素製造や、輸送、貯蔵に関する課題解決を目指す「サプライチェーン型プロジェクト」、商用車、鉄道、船舶、化学、鉄鋼といった分野での水素需要拡大を目指す「需要拡大型プロジェクト」があります。
  2. 政策提言
    設立から3か月後となる2021年3月16日、水素バリューチェーン推進協議会の共同代表3人は、梶山経済産業大臣に政策提言書を手渡し、水素事業の拡大や、安価な水素の供給に向けた協力を依頼しました。梶山大臣はこれに対し、2050年の脱炭素社会実現を目指す上で水素は欠かせないとし、普及策を検討する意向を示しています。
  3. 国内外での情報収集・発信など
    セミナーや講演を通じた相互啓発や理解活動を通し、社会に向けて危機感を共有して、水素社会実現への協力をよびかけています。協議会主催のオンラインセミナーの開催や、シンポジウムでの講演などが行われています。また、国際的な活動としては、2021年6月に「カーボンニュートラルに向けた日欧産業会議」にて講演が行われ、欧州水素・燃料電池協会(Hydrogen Europe)などと活発な議論が交わされました。
二酸化炭素から水素へ

活動を進めるためのワーキンググループ

また、水素バリューチェーン推進協議会には3つのワーキンググループがあり、団体の具体的な活動に関する議論が行われています。各ワーキンググループと役割は次の通りです。

  1. 事業化・規制ワーキンググループ
    社会実装プロジェクトの創出、規制緩和などを政府へ提言
  2. 渉外ワーキンググループ
    関連団体との連携、Hydrogen Councilとの連携強化、広報
  3. 調査ワーキンググループ
    調査・分析を行い、情報発信、調査レポート作成

水素は、二酸化炭素などの温室効果ガスを発生しないため、脱炭素社会の実現と地球温暖化の抑制のために重要なエネルギー資源です。水素バリューチェーン推進協議会は、水素社会の早期実現を目的として、水素の社会実装のためのプロジェクトの創出や政府への政策提言、国内外での情報収集・発信などを行っています。2021年8月現在170社の企業が参画しており、地方自治体や大学なども加わって、水素社会実現に向けた取り組みが進められています。

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