ソーラーシェアリングについて詳しく解説!農業と太陽光発電を同時にする方法
2019.11.8

「ソーラーシェアリング」という言葉をご存知でしょうか。ひとつの農地を、作物の育成と太陽光発電で“同時に”活用する取り組みです。
こちらでは、ソーラーシェアリングの概要やメリット、注意点などについてお話しします。
ソーラーシェアリングとは?【基礎知識】
ソーラーシェアリングとは、農地の上に太陽光パネルを設置し、農作と太陽光発電を両立することです。作物によっては、ある程度日光を遮っても通常と同じように成長するものがあります。ソーラーシェアリングでは、一定の間隔を空けて脚付きの太陽光パネルを設置することで、作物の育成に必要な日射を確保しながら、同時に太陽光発電を行います。
太陽光発電が普及するにつれて、太陽光発電システムを設置できる用地は急速に減少していきました。そんななか、新たに太陽光発電用地として注目されたのが農地です。2013年に、農作用だけではなく太陽光発電用のスペースとして農地を利用するソーラーシェアリングが正式に認められました。
また、ソーラーシェアリングは日本の農家が抱える問題を解決する取り組みとしても期待されています。高齢化、後継者不足、収入減少など、農家は多くの問題に直面している状況です。ソーラーシェアリングでは安定した売電収入が見込めるため、そのメリットが注目されるようになれば、こうした問題が解消されるかもしれません。

一方で、ソーラーシェアリングにはいくつかの課題も残されています。日光を遮断するという性質上、作物の種類によっては、成長を阻害してしまう可能性は否定できません。また、ソーラーシェアリングでは、現在のところ20年間の農業継続義務が設けられているため、長期的な運用計画を立てた上で着手する必要があります。
ソーラーシェアリングに適した農作物は何?
ソーラーシェアリングでは、ある程度日光を遮ることになるため、農作物の選定に関しては注意が必要です。
野菜の日照特性には一日中の日照が求められる「陽性」、半日程度の日照が求められる「半陰性」、日照が求められない「陰性」があります。
ソーラーパネルによる遮光率が30%程度の場合であれば、陽生植物の生育にも問題ないと考えられています。ただし、陽生植物に関してはソーラーシェアリングでの農作に許可が下りないこともあるため、あまり一般的ではありません。
現実的にソーラーシェアリングに適した農作物といえるのは、ほうれん草、小松菜、かぶなどの半陰性植物、みょうが、にら、しそなどの陰生植物です。

全国的には、みょうが、サカキ、稲、しいたけ、ブルーベリーなどをソーラーシェアリングで育てる例が目立っています。一方で、全国数件しか事例がない農作物もあり、適した農作物の選定に関しては各地で試行錯誤が行われているようです。
ソーラーシェアリングの費用・収益はどのくらい?補助金はあるの?
売電による収益が期待できるソーラーシェアリングですが、実際にはどの程度の収益が見込めるのでしょうか。また、どの程度のコストで導入できるのか気になりますね。
ここでは、ソーラーシェリングの初期費用や収益についてお話しします。
ソーラーシェアリングの初期費用と収益
ソーラーシェアリングの初期費用は太陽光発電パネルの規模や農地の面積によって異なります。
仮に、1000~1300平方メートルの農地に遮光率30%程度の太陽光パネルを設置しようとした場合、太陽光発電設備全体の発電量は50kW程度です。この程度の規模であれば、1200~1700万円の費用が見込まれます。一般的な太陽光発電システムの単価は20万円/kWですが、ソーラーシェアリング場合は、パネルを高い位置に設置するための架台が必要なため、やや割高になることを覚えておきましょう。
設備利用率を考慮すると、1000平方メートルの売電収入は月々約8万円弱です。
(発電量50kW、設備利用率15%、売電価格14円/ 1kWhで算出した場合)
同条件で発電できると考えると、12年程度で初期コストを回収できます。また、売電価格はFIT法によって20年間保証されます。
FIT制度については、「固定価格買取制度(改正FIT法)とは?太陽光発電の売電についてわかりやすく解説」を参照してみてください。
ソーラーシェアリングの補助金とは?
2018年度からは、環境省と農林水産省の連携により、ソーラーシェアリング導入に対する補助金が提供されています。
以下は具体的な補助内容です。
再エネシェアリングモデルシステムの事業化計画策定(上限1000万円)
営農を前提とした、農地等における再エネ発電設備の導入および農林漁業関連施設・地方公共団体等の周辺施設への供給に向けた計画策定(再エネシェアリングモデル)費用を補助。
再エネシェアリングモデルシステムの導入(2分の1補助)
太陽光発電、蓄電池、自営線等の設備導入費用に対する補助。
ただし、これらの補助金はFIT制度と併用することができません。ソーラーシェアリングをして、発電した電気を自家消費としての利用を検討している場合は、ぜひ利用しましょう。
ソーラーシェアリングには固定資産税がかからない?
農地を太陽光発電に利用する場合、通常は農地転用の手続きが必要です。一方、ソーラーシェアリングでは農地としてもその土地を利用し続ける一時転用という扱いになるため、農地転用の手続きは必要ありません。

農地転用すると、固定資産税や相続税が大きく上がります。その点、ソーラーシェアリングでは純粋な農地のままと同じ固定資産税、相続税が維持される点がメリットです。
ソーラーシェアリングの注意すべき点
一方で、ソーラーシェアリングには注意すべき点もいくつかあります。
まずは、収益の不安定性です。太陽光発電は再生可能エネルギーのなかでも比較的安定性に優れていますが、毎年同じ収益が得られるわけではありません。採算が取れない場合は、営農でカバーする必要があります。あくまで農業のノウハウがある方や、もともと農業を営んでいる方が始めるべき太陽光発電といえるでしょう。
また、農地が密集している地域では、ソーラーパネルによる影や、風で倒れたパネルによる近隣の農地への被害が起きています。こうしたトラブルを防止するための対策も必要です。
農地を太陽光発電施設としても機能させるソーラーシェアリングは、収入不足、後継者の不在など農家が直面している問題を解決するカギになるかもしれません。
また、再生可能エネルギーのさらなる普及を後押しする取り組みとしても期待できるでしょう。