太陽光発電はやめたほうがいい?その理由と現在の状況について解説
2022.8.23

公開:2019年10月29日
更新:2022年08月23日
太陽光発電は再生可能エネルギーのひとつで、企業の投資対象としても注目されており、太陽光発電の導入事例は毎年増加しています。一方で、太陽光発電は導入しないほうがいいという見解もあり、注意が必要な点もあります。
この記事では、太陽光発電を導入しないほうがいいと言われる理由や対策について詳しくまとめます。
太陽光発電は本当にやめたほうがいい?
太陽光発電システムで発電した電力の売電価格低下や、太陽光発電の故障など、システム導入当初の予定通りに費用を回収できず、太陽光発電を導入して失敗したという話を耳にすることがあります。太陽光発電を導入しないほうがいいというのは本当なのでしょうか?
最近の動向をみると、投資目的での太陽光発電の導入は少なくなってきたようにもみえますが、一方で気候変動対策の一つとして、太陽光発電を含む再生可能エネルギーの導入は世界の大きなトレンドとして進展しています。
日本では、菅義偉前首相が2020年の所信表明において、2050年にカーボンニュートラル、脱炭素社会を目指すことを宣言しました。脱炭素社会の実現に向けて、省エネや化石燃料に頼らない創エネが求められている限り、国や国際社会は再生可能エネルギーにインセンティブを与え続けると考えられます。短期的に太陽光発電の導入が低迷することがあったとしても、10年、20年という長期的な視点で考えれば、脱炭素社会の実現という観点から、太陽光発電の導入は今後も進んでいくと考えられます。
一方で、「FIT売電価格の低下」、「自然災害に対する脆弱性」、「環境への影響」など、太陽光発電に関するデメリットを指摘する声も聞こえてきます。そうした問題について、1つ1つ考えてみましょう。

太陽光発電はやめたほうがいいと言われている理由とその解決方法
太陽光発電のデメリットとして挙げられるのは、主に以下の5点です。
- FIT制度における売電価格の低下による利益減少
- シミュレーション通りに発電しない
- 自然災害などによる故障のリスク
- メンテナンス費用が高い
- 太陽光発電は環境に悪いと指摘されることがある
これらの意見について、詳しくみていきましょう。
FIT制度における売電価格の低下による利益減少
太陽光発電を導入する際のデメリットとしてよく指摘されるのが、FIT制度による売電価格が年々低下していることです。
FIT制度(固定価格買取制度)とは、太陽光発電で生み出した電力を、家庭用(10kW未満)は10年間、産業用は20年間、一定価格で買い取ってくれる制度です。
売電価格は再生可能エネルギーの導入やエネルギーの供給状況を鑑みて毎年見直されており、FIT制度で電力会社が支払う金額の一部は、電気料金として私たち消費者が負担しています。
FIT制度による固定買取価格は年々低下しているため、売電により得られる利益が減少していると捉えられがちです。
一方で、太陽光発電システムの導入費用も大幅に下がっており、FIT価格の低下だけを見て、利益が低下するとは言えません。
また、2022年4月からはFIP(Feed-in Premium)制度も開始されました。これは従来のFIT制度のように、固定価格での電力買取ではなく、電力需要に合わせて電力価格が変動する仕組みです。これによって、売電による利益が変動する形になります。
いずれにしても、売電価格とシステムの導入費や運用費をみながら、利益が最大化されるように導入の方法を検討することが重要です。
FIP制度とFIT制度については「FIPとは?ポストFIT制度?産業用太陽光発電の新制度について徹底解説」で詳しく解説しています。

シミュレーション通りに発電しない
太陽光発電の発電量は、事前にシミュレーションすることができます。太陽光発電は天候に左右されるため、事前のシミュレーションと実際の利益が一致することはありませんが、実際の発電量が、事前のシミュレーション結果と大きく異なる事例も報告されています。
この問題には、様々な原因が考えられます。
原理的に避けられない発電ロスや、太陽光発電の販売事業者が、知識不足で必要なデータをシミュレーターに加えていないなどの人為的ミス、あるいは販売促進のために恣意的なデータを見せてくるケースもあるかもしれません。こうした事態を避けるためには、事前に複数のシミュレーションを行い、相場を自身で調査しておく必要があります。
太陽光発電による発電量は「1日の日照時間(h)」に「発電効率(kWh/h)」を掛けることで、大まかな計算ができます。以下の点に注意すれば、さらに詳細なシミュレーションができるでしょう。
- パワーコンディショナーなどの機器や配線よる発電ロスを考慮していること
- 単純な日照時間でなく、地域ごとの日射量を用いて計算していること
自身で計算した発電量と、販売事業者が提示してきた発電量を比較し、大きな乖離がないかを確認することをお勧めします。「シミュレーション通りに発電しない」という問題は、簡易な下調べで回避することができます。
太陽光発電のシミュレーションに関する注意点は「太陽光発電のシミュレーションが必要な理由や方法、注意点まで徹底解説!」に詳しくまとめましたので、是非ご覧ください。
また、NEDOの年間日射量データを利用すれば、より精度の高いシミュレーションが可能となります。
NEDOについて詳しく知りたい方は「NEDO日射量データベースで太陽光発電の効率を知ろう」をご覧ください。
自然災害などによる故障のリスク
太陽光パネルは太陽光の当たる屋外に設置しなくてはなりません。そのため常に自然災害のリスクに晒されます。
多少の災害では故障しないように設計されていますが、豪雨による土砂崩れによって太陽光パネルが破損したケースや、台風で太陽光パネルが飛ばされたり、飛来物によって破損したりする事例もあります。パネルだけではなく、パワーコンディショナーも落雷や大雪、雹などにより故障することもあります。
このような災害に備えるために、火災保険、動産総合保険などの保険に加入することをおすすめします。
また、自然災害ではありませんが、家庭用の太陽光発電システムでは、太陽光パネルの施工時に屋根に穴をあけて設置することがあります。
このとき、不慣れな施工業者や粗悪な施工業者が作業すると、雨漏りが発生するケースがあります。施工業者についても事前にチェックしておくと安心できます。
太陽光パネルの寿命やメンテナンスについては「太陽光パネルの寿命は何年?パネルやPCSのメンテナンス方法を解説」をご覧ください。
メンテナンス費用が高い
太陽光発電は定期的なメンテナンスが必要で、メンテナンス不足のために火災が発生することもあります。また、メンテナンスをしないとFITの適用を受けられなくなる場合もあるので、必ずメンテナンスをしましょう。
メンテナンスを行うことで、発電効率を維持し、パネルの寿命を延ばすことができます。パワーコンディショナーは、メーカー保証期間が15年程度であり、10年から15年で交換が必要になります。
メンテナンスは、専門の業者に依頼したほうが良い場合も多く、費用の相場や必要性に応じて業者を選択し、必要な費用は積み立てておくとよいでしょう。
太陽光パネルの設置事業者によっては、メンテナンスを無償で実施するところもあります。
太陽光パネルのメンテナンスと注意点については「太陽光パネルのメンテナンス費用と方法は?義務化されている?」をご覧ください。

太陽光発電は環境に悪いと指摘されることがある
太陽光発電システムを設置することで、自然を破壊しているという指摘もあります。例えば、大規模な太陽光発電を設置するために森林を伐採した結果、豪雨による土砂崩れを誘発するといったケースです。
また、住民とのトラブルになる場合もあるので、メガソーラー設置の際には十分な住民への説明会を実施し、環境負荷の少ない場所を選ぶ必要があります。
一方で、傾斜の激しい土地に無理に設備を置いたことによる、土砂崩れや地滑りも報告されていますが、こちらは施工側の責任であることがほとんどです。
危険度の高い土地は安く手に入れやすいですが、事故のリスクと釣り合いませんので、避ける方が無難でしょう。
メガソーラーに関しては「メガソーラーとは?ビジネスで注目されるメガソーラーのメリットや注意点、導入事例もご紹介」に詳しくまとめましたので、ご覧ください。
ソーラーパネルを製造するときにCO2を排出するため、太陽光発電はCO2削減につながらないという意見もあります。
しかし、ソーラーパネルの寿命が20年から30年であるのに対して、ソーラーパネルの「CO2ペイバックタイム」は1年から3年程度であり、製造時に発生した分のCO2を1年から3年で回収できるといわれていますから、総合的には地球温暖化防止につながります。
太陽光発電は脱炭素化の手段として見直されている
環境意識が高まる以前には、太陽光発電を導入し、発電したすべての電力を、FIT制度を活用して売電するケースが多くありましたが、現在では発電した電力の自家消費が注目されています。
その理由は、太陽光発電の売電価格の低下と、近年の通常の電気料金の上昇から、自家消費による経済的メリットが相対的に高まっているからです。また、2020年には太陽光発電の発電区分が変わり、中小規模のシステムには「地域活用要件」が設けられ、これを満たさないシステムは原則FIT価格で売電することができなくなっていることも、自家消費のインセンティブを高めています。
太陽光発電事業はFIP制度の導入などによって大きく変化していますが、これから導入を進める企業にとって、敷居は確実に低くなっています。先に述べた設備価格の低下もありますが、PPAのような初期投資が不要のサブスクリプションモデルがこれを後押ししています。
PPAについて詳しくは「PPAとは?初期費用なしで企業に太陽光発電が導入できるしくみ!」をご参照ください。
さらには、太陽光発電の運用・メンテナンスの観点では、例えば、三井物産フォーサイト(MBF)が、メガソーラー発電所などのエネルギー関連施設の運転・保守管理、電力の取次販売を行っており、運営管理のワンストップ受託を通した太陽光発電のコスト削減や普及拡大に貢献しています。
三井物産フォーサイト(MBF)について詳しくは「MBF/エネルギーマネジメント事業」をご覧ください。
こうした活動はこれまで太陽光発電システム設置に消極的だった企業の姿勢を変えつつあります。
脱炭素社会の実現に向けて、太陽光発電の導入に向けたハードルが下がることで、太陽光発電を導入する企業が増加し、脱炭素化が加速していくことが期待されます。
太陽光発電には批判もありますが、それを補う対策やメリットも多くあります。太陽光発電システムの導入をお考えの方は、どのように運用されるかも併せて検討されてみてはいかがでしょうか。