【2021年度】太陽光発電の売電価格を予想!仕組みと今後の売電価格を予測
2021.1.29

この記事では、これから太陽光発電の導入を検討している方に向けて、売電の仕組みを解説します。「2021年はどのくらいの価格で売電できるか」という予測も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
太陽光発電は売電できる?FIT制度・2019年問題・卒FITをおさらい
まずは、太陽光発電の売電の仕組みについてご説明します。
太陽光をはじめ、再生可能エネルギーで発電した電気は、電力会社が一定の期間、一定の価格で買い取るという制度があります。
この制度を固定価格買取制度(FIT制度)といいます。
FIT制度について、詳しくは『固定価格買取制度(改正FIT法)とは?太陽光発電の売電についてわかりやすく解説』 をご覧ください。
FIT制度による売電は、産業用の太陽光発電システムであれば20年間、家庭用の太陽光発電システムであれば10年間と定められています。この期間中は、一定の価格で電力を売ることができます。
10年ないし20年で、FIT制度による買い取り保証期間が終了することを「卒FIT」と呼びます。FIT制度の前身である余剰電力買取制度が2009年11月に開始したため、2019年に初めて「卒FIT」となる事業者が現れました。そのため、卒FITにどう対応していくかといった、いわゆる「2019年問題」も話題になりました。
卒FITの2019年問題について、詳しくは「太陽光発電は売電できなくなるの?2019年問題とFIT満了を解説」をご覧ください。

卒FIT後に行える太陽光発電の運用方法は、電力を高値で買い取る電力会社を探して売電を続けるか、売電は行わずオフィスや家庭用の電力として自家消費するかの2択となります。
卒FIT後は、一定価格の買取保証はありません。電力会社への売電は可能ですが、それぞれの電力会社が独自に買取価格を決定できるようになります。
卒FIT後の買取価格は、期間中に比べると安価になってしまいます。しかし、電力事業者によって買取価格は異なるため、お得な売電先を選ぶことが重要になります。
卒FIT後の対応について、詳しくは「卒FIT後も売電できる?FIT制度後の電力会社等の対応とあわせて解説」の記事をご覧ください。
太陽光発電の売電価格はどうなる?これまでの推移と2021年度の予想
太陽光発電で売電をする際に、最も気になるのは売電価格です。売電価格は10kW未満の住宅用太陽光発電、50kW未満の産業用太陽光発電で定められており、ともに買い取り制度の開始時から下がり続けているのが現状です。
2012年から2020年の間に、10kW未満の施設で42円/kWhから21円/kWhへ、10kW以上50kW未満の施設で40円/kWh+税から13円/kWh+税まで下がっています。
政府は、これからも売電価格を引き下げる意向を示していますので、今後、売電価格が高くなる可能性は低いといえるでしょう。
また、2020年度には、太陽光発電の売電に関わる大きな制度改正がありました。それまで、10kW以上50KW未満の太陽光発電では、発電した電気を使って余った分だけを売電できる「余剰買取制度」と、発電したすべての電力を売電する「全量買取制度」のどちらかを選べました。
しかし、2020年度からは、50KW未満のすべての太陽光発電で「余剰買取制度」のみとなっています。また、この際の自家消費量は、発電した電力量の30%以上である必要があります。
2020年度の売電価格や制度変更について、詳しくは「【2020年度】太陽光発電の買取価格(家庭用・産業用)と発電区分の変更点を解説」 をご確認ください。
2020年度までの売電価格の推移
これまでの売電価格の推移を表にすると、以下のようになります。
10kW未満(住宅用) | 10kW以上(産業用) | ||
出力制御対応機器設置義務なし | 出力制御対応機器設置義務あり | ||
2009年度 | 48円/kWh | 24円/kWh | |
2010年度 | 48円/kWh | 24円/kWh | |
2011年度 | 42円/kWh | 24円/kWh | |
2012年度 | 42円/kWh | 40円/kWh | |
2013年度 | 38円/kWh | 36円/kWh | |
2014年度 | 37円/kWh | 32円/kWh | |
2015年度 | 33円/kWh | 35円/kWh | ~6月30日:29円/kWh 7月1日~:27円/kWh |
2016年度 | 31円/kWh | 33円/kWh | 24円/kWh |
2017年度 | 28円/kWh | 30円/kWh | 21円/kWh |
2018年度 | 26円/kWh | 28円/kWh | 18円/kWh ※2,000kW以上は入札 |
2019年度 | 24円/kWh | 26円/kWh | 14円/kWh ※500kW以上は入札 |
2020年度 | 21円/kWh | 10kw以上50kW未満:13円/kWh 50kW以上250kW未満:12円/kWh ※250kW以上は入札 | |
調達期間 | 10年間 | 20年間 | |
消費税 | 税込価格 | 税別価格 |
2021年度の売電価格を予想
売電価格は年度単位で決定されます。2020年度の売電価格が2020年の3月に決定したことを参考にすると、2021年度の売電価格は、2021年の3月ごろ発表されると予想できます。
10kw未満の住宅用太陽光発電も、10kw以上の産業用発電も、売電価格は下がる傾向にあります。この背景には、太陽光発電設備の導入費用やメンテナンス費用が下がっていることも挙げられるでしょう。
ここ数年の売電価格を前年度比で見ると、10kw未満では「-2、3円」程度、10kw以上では「横ばい、もしくは-1円」程度の下がり幅となっています。
以上をふまえると、2021年度の売電価格は、10kW未満(住宅用)で18~19円/kwh、10kw以上で13円/kwhと予想できます。

2021年に太陽光発電の売電を始めるメリットとは?売電収入を得られる?
売電価格が下がり続けているため、2021年に太陽光発電の売電を始めるメリットは無いと感じられるかもしれません。しかし、太陽光発電を行うメリットが無くなったわけではありません。以下で、これから太陽光発電を始める際に考えたいポイントをご紹介します。
初期費用は下がってきている
売電価格が下がってきている理由は、太陽光発電の売電に参入する事業者が増加していることだけではありません。売電価格は、事業者が発電システムの初期費用を回収できるように設定されています。
つまり、太陽光発電を導入するための初期費用が安くなっているために、売電価格も下がっているということなのです。
現在、住宅用の太陽光発電設備であれば、工事費用も含めて100万円程度で設置することができ、中には100万円を切ることもあります。この金額は、10年前の約半分です。
もちろん、売電で初期費用を回収するためには、実際にどれくらい発電できるのかを知ることが重要になります。なぜなら発電量は日当たりによって大きく左右されるためです。
発電量の詳しいシミュレーションを行う際の注意点については「太陽光発電のシミュレーションが必要な理由や方法、注意点まで徹底解説!」の記事をご覧ください。
また、専門業者にシミュレーションを依頼する前に、自分で簡易的に発電量を調べておきたいという場合には「【太陽光発電の発電量】これを読めば1日/時間帯/月間/年間の発電量を計算できる」の記事を参考にしてください。

発電した電力を自家消費に充てることでさらなるメリットがある
売電価格が下がるほど、太陽光発電での利益は、期待できなくなります。しかし、発電した電力を自ら使う自家消費であれば、電気の使用料金を抑えられるという大きなメリットがあります。
電気料金には「再エネ賦課金」と呼ばれる費用が含まれています。これは、再生可能エネルギーで発電された電力を、FIT制度に基づいて電力事業者が買い取るための費用に充てられるものです。この再エネ賦課金制度が生まれたことにより、電気の使用料金が上昇しています。
また、再エネ賦課金は、始まった当時には0.22円/kWhでしたが、現在は2.98円/kWhまで増大しています。
再エネ賦課金については、「再エネ賦課金とは?再生可能エネルギー発電促進賦課金を徹底解説!」でくわしく解説しています。
このように電気使用料金が高騰する状況において、太陽光発電の電力を自家消費に充てれば、大きな経済的メリットが期待できます。
さらに、産業用の電力使用契約をしている場合には、電気料金の基本料金を下げることも可能になります。産業用電力は、1年間の「最大需要電力」を基準とする仕組みになっています。最大需要電力とは、デマンドと呼ばれる30分単位での使用電力のうち、その月で最も値が大きいものを指します。
つまり、過去1年間で最も電気の使用量が多かった30分間の電力量を基準とした契約になるのです。電気を多く使うピーク時に合わせて、太陽光発電で得た電力を自家消費すれば、基本料金を下げることができます。
この記事では、太陽光発電の売電について、基本的な用語、これまでの売電価格の推移、2021年度の売電価格の予想を交えて解説しました。太陽光発電を行う際には、売電だけでなく自家消費によるメリットも考慮する必要があります。
初期費用を安く抑えられる現在こそ、太陽光発電を始めるベストタイミングかもしれません。