太陽光発電を確定申告していないとどうなる?書き方や必要書類について解説
2020.11.27

運用状況によりますが、売電で得た所得は課税対象とみなされる可能性があり、必要に応じて確定申告が必要です。
今回は、売電収入の所得区分や計算方法、個人・法人における確定申告の進め方と必要書類について解説します。
太陽光発電の確定申告は必要?していないとどうなるの?
売電収入を目的に太陽光発電システムを設置する場合、運用後に得られた所得が課税対象になり、確定申告が必要になる場合があります。申告を忘れたり放置したりすると、無申告加算税や延滞税の支払い、脱罪などのペナルティが発生するので注意が必要です。
以下では、給与所得者である会社員(個人)と事業者(法人)で異なります。
給与所得者(会社員)の場合
売電所得によって得た収入から経費を引き、残った利益を「売電所得」といいます。給与所得者の場合、売電収入から経費を差し引いた売電所得が20万円を超えない限り、確定申告は不要です。
ただし、上記に雑所得を合わせて20万円を超えた場合は、確定申告が必要になる場合があります。
10kw以上を超えるシステムの場合は確認が必要
自宅の屋根や駐車スペースへ太陽光発電システムを設置など、一般的な住宅用太陽光発電システムの平均設置容量は、4~5kW程度。日射量や方位などの条件が良く、極端に発電量が多い場合を除き、「※余剰売電」による売電所得が20万円を超えるケースは稀でしょう。
一方、投資・副業目的で10kw以上の太陽光発電システムを設置した場合には、確定申告の可能性が出てきます。
給与所得者(事業者)の場合
前述のとおり、給与所得者で売電所得が20万円を超えた場合は、確定申告が必要になる可能性があります。ただし、売電所得が事業所得とみなされれば事業者になり、確定申告が必要になるボーダーは38万円に変わります。

【確定申告が必要か調べる】太陽光発電の売電収入による所得の計算方法
売電収入による所得の計算方法では、以下の計算式を用います。
雑所得または事業所得の計算方法 |
売電所得=売電収入-(※)経費 |
※経費=(設置費用-補助金)×償却率×(年間売電量÷年間総発電量) |
売電所得は、売電収入から設置費用などの経費を差し引いて算出します。経費の計算が複雑なので、関連項目について以下にまとめました。
項目内容 | 概要 |
売電収入 | 電力会社に売電して得た収入。電力会社からの「お知らせ」などで確認可能 |
設置費用 | 太陽光発電システムの設置から発電までにかかった費用 |
補助金 | 国や自治体の補助金制度を利用し、受け取った金額(受け取る予定の金額) |
償却率 | 太陽光発電システムの減価償却比率。定額法により「0.059=耐用年数17年」と決められている |
年間売電量 | 1年間で電力会社に売電した量。電力会社からの「お知らせ」で確認可能 |
年間総発電量 | 1年間あたりの総発電量。各家庭や事業所の太陽光発電メーカーで確認可能 |
それでは、以下の条件で簡単にシミュレーションしてみます。
- 設置者:給与所得者(会社員)
- 売電収入:250,000円
- 設置費用:2,000,000円
- 補助金:100,000円
- 償却率:0.059(耐用年数17年想定)
- 年間売電量:1,000kw
- 年間総発電量:2,000kw
シミュレーション例 |
(A)売電収入=250,000 |
(B)経費:(2,000,000-200,000)×0,059×(1.000÷2,000)=53,100 |
(C)売電所得:(A)250,000-(B)53,100=196,900 |
上記の場合、売電所得は196,900円となり、確定申告は不要です。
なお、法人・個人事業主でも同様の計算方法で売電所得を算出できます。ただし、固定資産税などを考慮する必要があり、計算自体は少々複雑になります
売電収入の所得区分は?
売電所得は税制上、雑所得・事業所得・不動産所得に分類されます。いずれも、所得税額は以下の計算式にて算出されます。
個人 | 課税対象額=売電収入(収益)-経費(費用)-各種控除 課税所得額×所得率=所得税額 |
法人 | 益金(売上)-損金(経費)=課税所得額 課税所得額×法人税率=法人税額 |
以下で、それぞれの区分の詳しい内容を解説します。
雑所得と見なされる売電収入
個人が住宅に太陽光発電システムを設置し、余剰売電を行っている場合の売電収入は、ほとんどが雑所得とみなされます。事業用の発電ではなく、あくまでも「余った電気」を売っているに過ぎないからです。
事業所得と見なされる売電収入
発電容量が10kw以上の太陽光発電システムは「産業用太陽光発電」と呼ばれます。そのなかでも、以下のような条件に当てはまるものは売電収入が事業所得としてみなされます。
- 発電容量が50kwを超える
- 太陽光発電装置の周りにフェンスを設置している
- 装置周辺のメンテナンス(除草・除雪)をしている
- 借地で太陽光発電を行っている
- そのほか、「事業所得」と総合的に判断される場合
なお、事業所得の判断はケースバイケースなので、詳しくは自治体に問い合わせてください。
不動産所得と見なされる売電収入
すでに不動産賃貸業を営んでいる人が、所有物件に太陽光発電システムを設置し、その余剰電力を売電した場合には不動産所得とみなされます。
太陽光発電システムを所有物件の一部と考えれば、売電によって収入が不動産取得に含まれるのは必然です。ただし、所有物件の太陽光発電システムで全量発電を行い、物件には一切使用していない場合は、不動産との関係性が認められません。この場合、事業として売電する場合は事業所得、そうでない場合は雑所得とみなします。

太陽光発電を確定申告するときの書き方
ここでは、太陽光発電での売電における確定申告に必要な書類と、その手順についてご紹介します。個人と法人、各ケース別で解説するので、ぜひ参考にしてください。
個人が確定申告する場合
給与所得者である個人の場合、確定申告時に以下の書類が必要です。
- 確定申告書
- 源泉徴収票:年末調整時に発行されるもの
- 控除関係の書類:社会保険料や医療費などに係わるもの
- 預金通帳:売電収入を確認できるもの
- 経費関係の書類:領収書や請求書、納品書など
- 売買契約書:太陽光発電システム導入時のもの
- 賃貸契約書:土地を購入・賃貸した際に必要なもの
- 保険関係の契約書や領収書:太陽光発電システムの設備に係わるもの
- 納付書:パワーコンディショナの電気代に係わるもの
上記に加え、太陽光発電システムに修理やメンテナンスが必要だったり、連系工事負担金が発生したりする際には、別途書類が必要です。申告前に状況を整理し、正しい必要書類を確認してから作業しましょう。
次に、確定申告書の作成手順を決めますが、手書きで作成する場合と、WEB上で作成場合の2パターンがあります。前者は手書きで申告書を作成する従来の方法で、後者は「e-Tax(国税電子申告・納税システム)」を利用し、国税庁のホームページ上で書類作成・申告を行います。
個人事業主の申告も含め、それぞれの作成手順は、以下の通りです。
手書きの作成手順
- 住所・氏名などの必要情報を記入
- 1年間分の収入金額から経費などを差し引き、所得金額を計算
- 所得控除を計算する
- 所得税などを計算する
- 申告書第一表に記入し、関連事項を埋めていく
- 第二表に記入し、住民税に関わる事項などを埋めていく
- 完成

WEB(e-Tax)での作成手順
- PC環境を確認した後、「書面提出」を選択する
- 該当の申告書を選択する
- 所得控除を計算する
- 生年月日や所得控除、税額控除などを入力する
- 所得を入力する
- 申告書第一表に記入し、関連事項を埋めていく
- 第二表に記入し、住民税に係わる事項などを埋めていく
- 完成
法人が確定申告する場合
法人には、決済期末から2カ月以内に確定申告を行う義務が課せられています。手順としては法人税の計算を行い、その後で事業税、住民税を計算します。なお、消費税については元帳からの計算となるので、算出方法が異なります。それぞれの計算が完了した後は決算を行い、その結果をもって確定申告・納税を行います。
なお、法人税は税引前当期純利益をもとに計算されます。ここには太陽光発電による収入も当然係わります。もちろん、事業税や住民税、消費税も同様です。
法人における確定申告の必要書類は以下となります。実際は細かく必要書類が異なりますので、以下は参考程度に留めてください。
法人税等の申告
- 確定申告書
- 地方法人税申告書
- 適用額明細書:必要な場合のみ用意する
- 法人事業概況説明書:会社事業概況書でも可
- 勘定科目内訳明細書
- 決算報告書
消費税の申告(課税事業者のみ)
- 消費税および地方消費税の確定申告書
- 消費税の還付申告に関する明細書:還付申告の場合に用意
地方税の申告
- 法人事業税・地方法人特別税・法人都道府県民税の申告書
- 別表:必要な場合のみ用意する
地方市町村税の申告
- 法人市町村民税の申告書
- 別表:必要な場合のみ用意する
個人・法人かかわらず、売電で得た収入には税金がかかります。ただ、実際は太陽光発電システムの設置容量・売電収入(売電所得)など、一定の要件を満たした場合のみ、税金が課せられます。
自宅や会社に太陽光発電システムがあり、売電を行っている際は、確定申告が必要か否かについてしっかりと把握しておきましょう。