太陽光発電の2019年問題とは?あなたの発電システムに影響はある?
2019.4.26

太陽光発電において、売電価格に関する「2019年問題」が注目されています。
発電システムの導入タイミングで影響が異なりますが、同じ問題は今後、毎年発生します。2019年には関係なくても、いつか問題の該当者になるかもしれません。
この記事では、太陽光発電の2019年問題の概要について、わかりやすく解説します。
また、問題の対象になったらどうしたらよいのか、その具体的な対策についてもご紹介します。ぜひお役立てください。
そもそも太陽光発電の2019年問題とは?
太陽光発電の2019年問題は、簡単にいうと、売電価格の保証期間や国が価格を決定したタイミングよって、太陽光発電による売電利益が、導入当初の予想を下回る場合があるという問題のことです。
もう少し詳しく説明します。
再生可能エネルギーの普及を目的として、2009年から「余った電力を電力会社が買い取る」という仕組みができました。最初は「余剰電力買取制度」という名称で始まり、2012年に「固定価格買取制度(改正FIT)」に統合されています。
このルールでは、一定期間において、固定価格で売電できることが保証されています。しかし、この買取保証期間が終了すれば、今までと同じ値段で電気を売ることは難しくなります。
実際、2019年の11月から買取保証期間が終わる一般家庭が出てきます。その数は50万世帯以上とされ、国や電力会社といった関係機関の対応が注目されています。
しかし、2019年3月現在、国はまだこの問題に対する具体的な施策を発表していません。
このように、制度適用外となる初めてのケース発生が2019年であることから、総称して「2019年問題」と呼ばれています。
売電価格については、「太陽光発電の売電価格!今後の推移や買取期間終了後の売電はどうなる?」で詳しく解説しておりますので、あわせてご覧ください。
太陽光発電の2019年問題の影響は重大?
太陽光発電の2019年問題が及ぼす影響は、それほど重大なのでしょうか。
結論からいえば、「それほど重大ではない」といえます。
なぜならば、太陽光発電システム導入者が損をする可能性は低いと考えられるからです。
2009年に開始され、現在まで続いている固定価格買取制度ですが、当初は政府から「11年目以降に適応されるであろう売電価格の想定」が発表されていました。
この11年目以降の売電想定価格に基づいて、投資などの利益シミュレーションをしていた場合は、当初の計算よりも、売電価格が下がってしまう可能性があります。
つまり、対象となるのは「ある特定の時期に太陽光発電を導入した人」に限られます。この「対象者」については、次項でもう少しくわしく解説します。
ただし、多くのケースにおいて、家庭用の太陽光発電システムは約8年で元が取れるといわれています。
すなわち、どの時期に太陽光発電システムを購入していたとしても、それによって大きく損をすることはほとんどないと考えられます。
太陽光発電の2019年問題で影響を受ける人は?
太陽光発電の2019年問題で直接的に影響を受けるのは、2009年から2015年までに家庭用太陽光発電システム(10kW未満)を設置した人です。
なお、ここでいう「影響」とは、当初想定していたメリットと実際の状況に、大きく相違が生じうることを指します。
固定価格買取制度は、再生エネルギーの普及を目的として始まりました。
制度が開始した2009年11月からしばらくの間は、余剰電力が非常に高い買取価格で取引されました。その価格は、48円/kWhです。現在の買取価格が24円/kWh(出力制御対応機器設置義務なし・10kW未満の場合)であることをふまえると、実に2倍の価格です。
この「非常に高価格で売電できる」という動機付けもあって、太陽光発電は社会から大きな関心を集めました。実際に導入する家庭も多く、発電システムは一気に広まりました。
また、2009年から2015年までの間、政府が発表していた「11年目以降に適応されるであろう売電価格の想定」は24円/kWh (家庭用電力料金単価と同程度)でした。2016年に11年目以降の想定売電価格が大幅に引き下げられ、11円/kWh(卸電力取引市場価格と同程度)と発表されています。
このような経緯にあり、2009年~2015年の間に太陽光発電システム導入をした家庭は、期待していた収入が大きく減ってしまうと考えられるわけです。
なお、10kW以上の発電をしている人(主に産業用)は保証期間が20年と長いため、今回の売電価格の問題については関係ありません。
太陽光発電の2019年問題の対処法は?
では、実際に太陽光発電の2019年問題に対面する人はどのような対処をすれば良いのでしょうか?
選択肢としては、以下の2つが考えられます。
- 自家消費する
- 売電を続ける
多くの場合、10年以内に太陽光発電システムの初期費用を回収していると考えられます。そのため、売電期間が満了した後に余剰電力をどうするかは、生活スタイルや利益の大きさで選ぶことになります。
それぞれの方法について、さらに詳しく見ていきましょう。
太陽光発電2019年問題の対処法①余剰電力を自家消費する
2019年問題を解決する1つの策としては、余剰電力を自家消費していくスタイルが推奨されています。
「電気は貯めておけない」という話を聞いたことがあるかもしれません。そのため、余った電力を売らないのなら損になると思われがちです。
しかし、設備やサービスを工夫することで、太陽光発電で得た電気を無駄なく利用できます。
例えば、蓄電池を活用してみてはいかがでしょうか?
蓄電池とは、充電することで繰り返し使える電池のことです。パソコンやスマホにも搭載されており、生活する上で身近な存在といえます。
この蓄電池に余剰電力を充電することで、発電ができない夜でも自家発電した電気を利用できます。結果的に、電気代を節約できます。
また、非常時の緊急電源としても使えるため、災害の多い日本ではいざというときに役立ちます。
蓄電池の中には、自動制御機能がついたものやスマホから操作できるものなどもあります。後付けが可能なものが多いため、蓄電池の設置は十分選択肢になり得ます。
ただし、この方法は設置費用がかかりますのでその点は注意しましょう。
蓄電池については
もし、電気自動車をお持ちであれば、太陽光発電はバッテリーの充電にも使えますし、蓄電池の役割を果たすケースもあります。電気自動車は電気代が高くなると懸念されがちですが、余った電気を使うのであれば、大きなコスト削減になります。
さらに、オール電化の家庭であれば、全てを電気でまかなうためにガス代がかからず、光熱費がお得になります。
太陽光発電2019年問題の対処法②売電を続ける
2019年問題直面後にも、余剰電力を売り続けるのも、選択肢の一つです。
もう少し具体的にいうと、
- 引き続き同じ会社に電気を売る
- 取引を終了し、新しい買取先を探す
という2種類の方法にわかれます。
2019年問題を前に、太陽光発電で得た余剰電力を継続して買い取る、と発表している電力会社もあります。大手電力会社も2019年6月までに、今後の方針を発表予定です。
もし、引き続き同じ会社と取引をしたい場合は、新たな契約を結ぶことになります。
注意点としては、新たな買取価格は下がる可能性が高いことです。
買取保証期間内の10年以内で投資分が回収されていると想定すれば、基本的に損にはありません。
また、あくまで自家消費で使わない分の電力を買い取ってもらう制度のため、電気代の削減は続いていますので、安心してください。
新しい電力買取先を見つける場合、電力自由化で参入した新しい電力小売事業である「新電力(PPS)」や、地域で電力の地産地消を試みる「地域新電力」も候補です。
新たに電気の市場に入ってきたこれらの事業者たちは、大手電力会社とは異なる家庭用のサービスを提供してくれる可能性があります。
もし、これらの事業者と取引したほうが利益を見込めると判断した場合は、乗り換えを検討するのもおすすめです。
2019年問題は、再生可能エネルギーの利活用が推し進められる中で、見逃せない課題ともいえます。1年ごとに保証期間を終えた該当者が数多く現れることから、今後の国の方針にも影響するからです。
しかし実際のところ、問題の対象者になっていたとしても、重大なリスクを抱える可能性は低く、これからの設備設置を考えている方には、この問題はまったく影響がありません。
たとえ影響を受ける方でも、自家消費の効率を上げたり、買取先を考えて売電を続けたりすることで、結果的に利益を出し続けることも期待できます。
ですので「問題」と名はついていますが、悲観的になる必要はありません。
この記事を参考に問題を捉え、今後の太陽光発電をどうしていきたいかを考えてみてはいかがでしょうか。