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VPP(バーチャルパワープラント)とは? 太陽光発電で補助金がもらえる?【2019年版】

VPP(バーチャルパワープラント)をご存知ですか? 電気エネルギーの在り方が問われる昨今、従来の大規模発電所に頼った電力システムからの脱却に向けて、注目されているのがVPP(バーチャルパワープラント)です。

今回は、そんなVPP(バーチャルパワープラント)の概要や仕組み、政府の補助金や実証例について解説します。

VPP(バーチャルパワープラント)とは?

VPP(バーチャルパワープラント)とは、各家庭やビル・工場などに設置されている小規模発電施設をIoT技術などを用いて連携・集約させ、ひとつの発電所のように機能させる考え方のことをいいます。

従来までの発電および電力供給は、火力発電所や原子力発電所などの大規模発電施設を用いて、需要者(電気を必要としている施設や家庭)に送電されていました。

しかし、電力供給には「同時同量の原則」という厄介な原則があります。この原則は、送電する側の電力量と需要者が使用する電力量が常に同量でなければならないというものです。

基本的に、大量の電力を長期間貯めておくことできません。そのため、従来の大規模発電施設では、需要が高まるピーク時に備えて、余分な発電が可能なインフラを整えておく必要があり、管理・運用コストが増大していました。

基本的に電気を貯めておけない(蓄電できない)という性質上、需要者が必要とする電力を供給できなければ、最悪の場合、停電を引き起こすリスクがあったのです。

そこで、注目されるようになったのが「VPP(バーチャルパワープラント)」という電力システムの考え方です。

VPPの仕組み
VPPイメージ

VPPは、直訳すると「仮想発電所」を意味するように、いくつもの小規模発電施設を集めてひとつの大きな発電施設とみなすシステムです。大規模発電施設に発電を集中依存させるのではなく、複数の小規模発電施設を連携し分散管理することで「同時同量の原則」が安定的に維持しやすくなるのです。

ここでいう小規模発電施設とは、主に各家庭やビルなどに設置された太陽光・風力・地熱発電などの再生可能エネルギーを指します。以前までは各所に設置された小規模発電施設は独立して存在しており、個別に自家消費せざるを得ない仕組みでした。

しかし、モノとモノをインターネットでつなぐIoT(Internet of Things)技術の台頭によって、個別の小規模発電所の情報や発電された電力の情報を集約し、遠隔操作することが可能になったのです。
つまり、IT技術の発展が、小規模発電施設をひとつの発電所のように機能させることを可能にしたのです。

最近では、需要者側が使用する電力を必要に応じて抑制し省エネしてもらうことで、全体の発電コストを調整する「ディマンドリスポンス」が普及してきており、その節電分をVPPで集約することで、発電量の最適化をはかっています。

VPP(バーチャルパワープラント)のメリットは?

では、VPP(バーチャルパワープラント)を導入した際のメリットにはどのようなものがあるでしょうか? ここでは、VPP(バーチャルパワープラント)の5つのメリットをご紹介します。

1. VPPで電力需給のバランスは安定する

VPP(バーチャルパワープラント)が普及することで、電力需要が高まった際にも電力を集約し送電することができるので、需給のバランスを崩すことなく安定性を保ちやすくなります。

2. VPPで大規模発電所の電力供給負担が少なくなる

従来は大規模発電所に発電を一存する仕組みでした。そのため、電力需要がピークの時期には、一部の大規模発電所で、その都度大量の電力を発電していたのです。

太陽光発電などの再生可能エネルギーを用いるVPPが普及すれば、発電元の施設が分散化するため、大規模発電所の負担が減り、電力需要のピーク時であっても電力供給を少なくすることができるのです。

3. VPP非常時の電力リスクを回避できる

大きな災害で電力供給が一部ストップするなど、大規模発電所に頼った発電システムでは、災害やトラブルによって大きな障害が発生しかねません。特に自然災害の多い日本においては、リスクが大きいと考えられます。

VPPにおける仮想発電所の仕組みが普及すれば、各小規模発電所から電力を集約できるので、非常時でも安定した電力供給を維持しやすいのです。

4. VPPで大規模発電所への投資を削減できる

従来は電力需要のピークに対応できるように、大規模発電所を備えておく必要がありました。設備投資や人件費・運用や管理などでコストがかかっていたのです。

VPPを導入すれば、電力需要のピークであっても、各小規模発電所から電力を集約できるので、社会や国全体の規模で見ると、大規模発電所にかかっていた諸々のコストを節減することが可能なのです。

5. VPPで電力の地産地消が可能になる

電力小売り全面自由化が開始された現在、VPPを活用した地方の小規模発電所が増えてきています。

地方の電力を集約させることで、電力の地産地消が可能になり、地方の経済活性化にもつながります。また、小規模発電所を活用した事業が増えることで、地方の新規雇用創出にも貢献します。

VPP(バーチャルパワープラント)の実証には補助金あり

VPP(バーチャルパワープラント)は経済産業省・資源エネルギー庁によって実証事業が行われています。資源エネルギー庁のHP「VPP・DR普及に関する施策」によると、実証事業では以下の取り組みを目指しているとのことです。

  1. 周波数調整など、より高度な統合制御に関する技術実証やエネルギーリソースの遠隔制御対応化(IoT)
  2. EVから系統に充放電し、需要供給を調整する技術(V2G)の構築等
  3. 省エネルギー・電力の負荷平準化
  4. 再生可能エネルギーの導入拡大および系統安定化コストの低減

VPPの実証事業では、事業別に「補助金」が設けられています。各事業と補助金は以下の通りです。

1. VPP基盤整備事業

VPP基盤整備事業は、VPPアグリゲーターの実証を支援し、事業課題の調査・分析及び必要なシステム開発を行う事業です。
人件費・実証経費・システム開発費などに対して定額の補助金が支給されます。

2. VPPアグリゲーター事業

VPPアグリゲーター事業は、VPP基盤整備事業者からディマンドリスポンスの指示を受けてVPP実証を行い、VPP構築に向けて技術実証・制度的課題の洗い出しを行う事業です。
人件費・実証経費・システム開発費などに対して、1/2以内の補助金が支給されます。

VPPアリゲーター事業の仕組み
アグリゲーター事業の仕組み

3. V2Gアグリゲーター事業

V2Gアグリゲーター事業は、電気自動車等を用いてV2G実証を行い、V2G構築に向けて技術実証・制度的課題の抽出を行う事業です。
人件費・実証経費・システム開発などに対して、1/2以内の補助金が支給されます。

4. VPP/V2Gリソース導入促進事業

VPP/V2Gリソース導入促進事業は、2と3で採択されたVPP/V2Gアグリゲーターが制御を行う蓄電池や制御装置などの導入を支援する事業です。
産業用蓄電池・リユース蓄電池・PCS・EMS・制御装置・導入工事費・EVPS・工事費などに対して、1/2の補助金が支給されます。

※参考元:経済産業省 資源エネルギー庁 VPP・DR普及に関する施策「事業分類表」

VPP(バーチャルパワープラント)の実証例

VPP(バーチャルパワープラント)構築の実証事業には、各地方自治体や民間企業が参画に乗り出しています。ここでは、3つの実証事業例をご紹介します。

横浜市:平常時はVPP・非常時は防災用電力として活用

横浜市は2016年から小中学校などの公共施設に蓄電器を設置し、VPP(バーチャルパワープラント)構築の実証事業を行っています。

災害時の緊急避難先となる公共施設に備え付けることで、停電を伴う非常時には「防災用電力」として活用する方針です。

※参考元:横浜市 バーチャルパワープラント(VPP:仮想発電所)構築事業

ダイヘン:独自技術を用いたVPP実証実験を開始

電力機器や産業用ロボットを製造する株式会社ダイヘンは、2016年からVPP(バーチャルパワープラント)による需要家のエネルギーリソースを一括制御する技術の実証事業を開始。

独自の自立分散協調制御技術「Synergy Link」を用いた「自律分散協調制御サーバのシステム構築」「機器の遠隔制御実証」に取り組んでいます。

※参考元:ダイヘン バーチャルパワープラント(VPP)実証実験

日本ベネックス:新型リユース蓄電器システムでVPP構築

産業機器の設計・製造等を行う株式会社日本ベネックスは、2017年12月に住友商事株式会社と連携し、日産自動車製のEV車と新型リユース蓄電器システムを導入。VPP(バーチャルパワープラント)構築実証事業に参画することを発表しています。

※参考元:日本ベネックス プレスリリース:電気自動車とリユース蓄電器を活用したVPP実証事業への参画について


自然災害の多い日本において、発電にかかるコストを下げ、安定性の高い供給システムを確立するVPP(バーチャルパワープラント)は、注目を高めています。さらに、太陽光発電をはじめとする様々な再生可能エネルギーの普及によって、今後、より一層注目されていくことでしょう。

VPPは、私たちの生活に欠かすことのできない電力エネルギーの在り方について、新しい方向性を示してくれるのではないでしょうか。

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