PPAモデルとは?太陽光発電を初期投資なしで導入できる仕組みを紹介
2022.8.5

公開:2019年08月05日
更新:2022年08月05日
太陽光発電システムの導入を、平時に使用する電力の供給源として、あるいは緊急用の電力として検討している方は多いかもしれません。
そんな中、問題となることが多いのが導入コストです。太陽光発電システム導入の初期費用は、年々、低下傾向にあるとはいえ、簡単に決断できる金額ではありません。そのようなケースでおすすめしたいのが、「PPA」という方法です。
こちらでは、PPAの概要やメリットについてお伝えします。
PPAモデルとは?その仕組みを分かりやすく解説
PPAとは「Power Purchase Agreement」の略であり、発電システムを所有している事業者と電気を利用する顧客との間で締結される販売契約です。具体的には、太陽光発電設備を工場や利用者住居の屋根などに無償で設置し、発電した電力のうち、使った分だけを利用者が買い取る契約形態を指します。
発電システムを所有しているのは、システムを提供する事業者です。そのため、電気を利用する顧客が設備設置に係る初期費用やメンテナンス費用を支払う必要はありません。
PPAモデルの仕組みと流れ
例えば、家庭やオフィスに設置されるウォーターサーバーは、水を使用した分だけ支払いが発生します。製薬会社や薬局が行っている配置薬も、薬を使用した分だけ支払いが発生するタイプのサービスです。PPAも、ウォーターサーバーや配置薬と同じように、「電気を使用した分だけ支払う」タイプのビジネスモデルといえます。
以下はPPAの一般的な流れです。
導入
PPAが締結されると、設備提供事業者によって顧客のもとに太陽光発電システムが設置されます。
この際、顧客(契約者)が初期費用を負担する必要はありません。また、運用中に発生するメンテナンスも、設備提供事業者が行います。
電気の使用
顧客は設置された太陽光発電システムによる電気を使用できます。運用中、顧客は電気使用量に応じた料金を設備提供事業者に支払います。
契約終了
契約期間満了後、もしくは顧客の電力消費量が一定量に到達すると、太陽光発電システムの所有権が顧客に移譲されます。
PPAモデルのメリットは太陽光発電を初期投資0円で利用できること
PPAは顧客と太陽光発電システムを提供する事業者の双方にメリットがある契約です。
ここからは、具体的なメリットを、顧客側、システム提供事業者側に分けてご紹介します。

顧客側のメリット
顧客企業側のメリットとして、まず太陽光発電そのものの魅力があげられます。災害などによる停電の際にも、自家発電設備として電気の利用が可能であること、環境に配慮した地球にやさしいエネルギーであることなどは、太陽光発電の代表的な魅力です。
一方、初期費用、運用コストの問題から、太陽光発電システムの設置は多くの企業にとってハードルが高いのも事実です。その点、PPAであれば、初期費用・メンテナンス費用の負担なしで、太陽光発電システムを導入できます。
また、太陽光発電を導入しているということは、「脱炭素経営を進めている」という企業イメージの向上に繋がります。自然エネルギーの使用を推進する国際的なイニシアティブ「RE100」に参加する国内企業は、2022年2月時点で65社となっていますが、RE100に参加すれば、企業が地球環境に配慮していることを対外的にアピールできるでしょう。
PPA事業者(太陽光発電システムの設置事業者)側のメリット
太陽光発電システムを運用するには、設備を設置するために十分な土地やスペースの確保が必要となります。PPAでは顧客事業者の土地(一般的には施設の屋上)にシステムを設置するため、システム所有事業者側で土地を用意する必要はありません。
また、設置システムによって作られた電力は原則として顧客企業が消費するため、電気の売却先が確保されているといえます。顧客が消費しきれなかった余剰電力については電力会社に売電するという選択肢もあります。
顧客とPPA事業者に共通するPPAのデメリット
PPAは顧客と事業者双方にとって「ローリスク」な契約モデルです。それゆえ導入が容易ですが、同時にリターンも小さくなってしまいます。顧客が自ら太陽光発電システムを所有・運用する場合と比較すると、リスクが小さい分、電気代節約の効果が小さくなり、長期にわたって太陽光発電を利用する場合には、PPAでは電気代が割高になる可能性があります。
設置した太陽光発電システムをどのくらいの期間使用するのか、システムメンテナンスに必要な費用はどの程度になるかなど、事前に調査を行い、PPAの導入を検討しましょう。
PPAに関する企業の取り組み
イオングループ
PPAで太陽光発電システムを導入している企業のひとつが、イオン株式会社です。同社はグループで行っている総合スーパー事業の店舗に、PPAモデルで太陽光発電システムを導入することを予定しています。(2019年6月時点)
さらに、イオンはRE100にも参加し、「2050年までに店舗が排出するCO2をゼロにする」という目標も掲げています。
現在のところ、同社のPPAモデル第1弾として、イオンタウン湘南(滋賀県湘南市)への太陽光発電システム導入計画が進められています。
2019年12月にはシステムの設置が完了し、運用が開始される予定です。PPA事業者として三菱UFJリースの子会社であるMULユーティリティーイノベーションと契約しているほか、他の事業者とも連携していく意向です。
RE100については「RE100とは?わかりやすく解説!日本企業の取り組みも紹介」で紹介しています。
株式会社エフピコ
食品トレーメーカーのエフピコは、2021年2月、太陽光開発を行う三井物産プラントシステム社とPPA契約を締結しました。
2022年から関東の2工場で太陽光発電システムが設置され、これによって同敷地内の関東リサイクル工場で使用する電力の全量相当の再生可能エネルギーが調達可能になるとしています。
2023年3月期からはその他の拠点でも太陽光発電によるエネルギー供給を検討中です。
太陽光発電システムでの電力消費や投資に興味を持っていたとしても、コストや用地の問題からすべての企業が導入できるわけではありません。
PPAは、「自家発電設備を備えたい」「売電による利益を得たい」「脱炭素を進めたい」といった要望を持つ企業等に、より手軽に太陽光発電を提供する仕組みです。顧客、提供者それぞれにメリットがあるため、今後の再生可能エネルギーの普及に向けた、重要な仕組みの一つといえるでしょう。