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FIPとは?ポストFIT制度?産業用太陽光発電の新制度について徹底解説

この記事では、おもに太陽光発電におけるFIP(フィード・イン・プレミアム)について、基本からわかりやすく解説します。FIT終了後に採用される可能性が高いとされるFIT制度の種類やメリット・デメリット、FITとFIPの違いなどを解説します。

FIT制度の見直しとFIP制度への移行

まず、FIP(フィップ)制度と関係の深いFIT(フィット)制度について再確認しましょう。

FIT制度は、再生可能エネルギーの固定価格買取制度のことです。

再生可能な発電方法で生み出された電力は、一定の価格で買い取ってもらえるということを、政府が定めた制度です。

太陽光発電を中心とする再生可能エネルギーの導入コストを下げ、普及させることが目的です。

また、買取に使われる費用は、再生エネルギー発電促進賦課金として、電力使用者から集められています。

FITについてのさらに詳しい説明は、「固定価格買取制度(改正FIT法)とは?太陽光発電の売電についてわかりやすく解説」をご覧ください。

FITの効果で、再生可能エネルギーの導入は拡大しました。

しかし、その一方で「適切な売電価格の設定が難しいこと」「市場原理が働きにくいこと」といった問題が指摘されています。

さらに、FIT制度について定めたFIT法(電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法)は、期間の制限がある特別措置法です。法律内において、2020年度末までに、制度の抜本的な見直しを行う旨が定められています。

このような状況から、2020年度末以降、特に産業用太陽光発電システムの買取制度は、「FIP」と呼ばれる新制度へ移行すると考えられています。

FIPとは?特徴や種類を解説!

FIPとは、「Feed-in Premium(フィード・イン・プレミアム)」の略であり、「フィップ」と呼ばれます。

ここでいうプレミアムとは、「割増金・補助金」を意味します。

FIP制度は、売電価格を市場原理に任せ、そこにプレミアム(割増金)を上乗せする仕組みをいいます。

さらに詳しくいうと、発電事業者が太陽光発電などによって発電した電気を、卸電力市場において直接販売し、「卸電力市場で実際に売れた価格+プレミアムの合計額」を受け取るものです。

諸外国では、ドイツなどにおいて、すでにFIT制度をやめてFIP制度を導入した例もあります。

FIPには3種類あり、それぞれに特徴があります。種類ごとに詳しく見ていきましょう。

FIP制度の3つの種類とそれぞれのメリット・デメリット

海外で導入されているFIPは、以下の3種類に分けられます。

  • プレミアム固定型FIP
  • プレミアム固定型FIP(上限・下限有り)
  • プレミアム変動型FIP

1つずつ解説していきます。

プレミアム固定型FIP

プレミアム固定型FIPは、市場価格がいくらなのかに関わらず、常に同じ金額の割増金を上乗せ(プレミアム固定)する方法です。

メリットとして、割増金部分の収入が計算しやすいこと、再生エネルギー発電促進賦課金の分の電気代負担が低くなることが挙げられます。

デメリットは、他の方法と比べて買取価格の増減の幅が大きくなり、事業者として売電収入がどれくらいになるのかがわかりづらくなることです。時間帯によって電力の需要量は異なり、市場価格は常に変動しますが、プレミアム固定型FITでは市場価格の上がり下がりを均等にすることはできません。

プレミアム固定型FIP

プレミアム固定型FIP(上限・下限有り)

市場価格と割増金の金額の合計額が一定の範囲を超えないよう、上限・下限を設けるやり方です。

合計額が上限ラインを超えた場合、オーバーした部分の割増金はもらえません。

一方で、合計額が下限を下回った場合は、下限ラインとの差額を補填するだけの割増金を受け取ることができます。

無制限ではなく、金額に上下制限をかけることにより、収入が比較的安定し、売電収入を予測しやすくなります。

ただし、デメリットとして、収入の伸びしろが少なくなってしまう可能性があります。

上限下限有り

プレミアム変動型FIP

市場価格と割増金の合計金額を、常に一定にする方法です。電力量あたりに支払われる金額を設定し、市場の卸電力価格に応じて、設定した金額に足りない分を割増金で調整します。

メリットは、売電によって得られる収入が安定することです。一定量の電力あたりの売電価格が一定になるため、固定価格買取のFITに似た方式といえます。

デメリットは、市場価格が下落した場合、割増金の締める割合が多くなることです。割増金の割合が増えると、政府の支出増大につながり、不足分は電力消費者から負担金として集金される可能性があります。

プレミアム変動型FIP

FIP制度とFIT制度の違いとは?

FIP制度とFIT制度の一番の違いは、「市場取引による価格決定があるかないか」です。

前述のとおり、FIT制度は太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギー発電の普及・拡大のため、実施されたものです。

FIT制度は市場取引から離れているため競争のリスクもなく、発電事業へ参入しやすくなるという効果がありました。

しかしその一方で、積極的なビジネス展開などのハードルになる、電力消費者の費用負担(賦課金)を軽減するためコスト削減が求められる、といった課題も出てきました。

FIP制度は、今まで競争から外れていた再生可能エネルギー電気を、市場に統合するものです。

そのため、「発電事業としての自立性確保」および「市場における競争力アップ」につなげることが期待されています。

政府としては、いずれ、再生可能エネルギー電気が完全自由競争で取引されることを見越し、FIPで事業者に経験を積んでもらうという考えもあります。

そこで、再生可能エネルギーの中でも、競争力の期待される大規模事業用太陽光発電(メガソーラー)において、制度移行が検討されているというわけです。

今後、FIP制度で注目されるポイント

FIPは、まだ具体的な制度内容が確立していません。先行きが注目されるポイントとして、以下の3点が挙げられます。

  • 割増金の価格設定
  • 割増金が付与される期間
  • FIP制度の対象

割増金の価格設定は、3種類あるタイプのどれが採用されるのかによって変わってきます。

また、時期や時間帯によって異なるのか、制度開始当初の設定金額から変わるのかといった点も、得られる利益の予測に関係してきます。

割増金が付与される期間もポイントの一つです。

FIT制度では、固定価格での買い取り期間は産業用では20年間、家庭用では10年間という設定でした。

もし割増金の付与に期間の設定がなされた場合、発電システムの導入計画や売電収益に大きな影響を及ぼします。

さらに、FIP制度では、すべての再生可能エネルギーが制度の対象になるとは限りません。

また、諸外国では、発電システムの規模に応じてFITとFIPのどちらかが適用されるなど、制度の併用も行われています。

発電事業者としては、いざFIP制度の詳細が固まったとき、「自分の保有するシステムがどの制度にあてはまるのか?」という点も考える必要があります。

このように、現時点では不確定要素も多く、今後のFIP制度の検討・決定に注目が集まっています。


FIPは、発電事業者が発電した電気を市場において自由に売り、売電価格に「プレミアム」と呼ばれる割増金を上乗せする制度です。

海外ではすでに採用している国々もあり、日本でもFIT制度の見直しが図られている現在、この制度が採用される可能性が高いと考えられます。

これから太陽光発電システムを導入する場合、FIP制度を視野に入れた検討が必要といえます。

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