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カーボンプライシングとは?その概要と日本の導入状況を詳しく解説

脱炭素社会を実現させるため、世界各国で取り組まれている「カーボンプライシング」。この記事ではカーボンプライシングの概要と、海外やや日本国内での導入状況について詳しく解説しています。

カーボンプライシングとはどんな制度?

カーボンプライシングは、地球温暖化対策の1つです。排出される二酸化炭素(カーボン)に価格をつける(プライシング)ことで、二酸化炭素を排出した企業に金額負担を求めるものです。

二酸化炭素の排出量に応じて費用負担は大きくなります。

世界銀行の「世界のカーボンプライシングの実施状況」の報告書によると、2021年4月の段階でカーボンプライシングを導入している国と地域は合計64で、過去10年間のうちに3倍以上に増加しています。

カーボンプライシングの目的

地球温暖化を抑制するためには、世界規模で二酸化炭素を排出しない脱炭素社会に向かっていく必要があります。

日本では、中期目標として2030年までに温室効果ガスの排出を26%削減(2013年度比)、長期的には、2050年までに実質的な温室効果ガスの排出ゼロを意味するカーボンニュートラルを目標に掲げています。

カーボンプライシングを導入する目的は、二酸化炭素の排出量に比例した課税を、企業や家庭に対して行うことで二酸化炭素排出を抑える行動を促すことです。

カーボンプライシングには、代表的な制度として「炭素税」と「排出量取引制度」があります。

二酸化炭素の値段

カーボンプライシングの種類を解説!

カーボンプライシングには、二酸化炭素の排出量に比例した費用負担を求め、二酸化炭素削減に直接影響を与える明示的カーボンプライシングと、消費者や生産者に対して、間接的に二酸化炭素排出削減を促す暗示的カーボンプライシングの2種類があります。

明示的カーボンプライシングの代表例が「炭素税」と「排出量取引制度」です。

炭素税とは、二酸化炭素の排出量に応じて負担を求める税制のことです。日本では「地球温暖化対策のための税」という名称で、石油・石炭・天然ガスといった全ての石油燃料の利用に対して課税しています。ちなみに日本では、二酸化炭素排出量1トンあたり289円が課税されます。

炭素税については、「炭素税とはどんな税金の制度?導入国の動きやメリット・デメリットを解説!」に詳しくまとめましたので、あわせてご覧ください。

排出量取引制度とは、温室効果ガスを排出する個々の事業者に対して、温室効果ガスの排出枠(排出の許容量)を設定し、その排出枠の取引を可能にする制度です。仮に設定された排出枠を超えてしまった場合には、上限に達していない事業者から余っている枠を購入して補完します。これにより、仮に一部の事業者が温室効果ガスを多く排出してしまっても、事業者全体としての排出総量を抑えることができます。

二酸化炭素の金額


排出量取引については、「排出量取引とは何か?仕組みや現状、今後の課題をわかりやすく解説!」に詳しくまとめましたので、あわせてご覧ください。

暗示的カーボンプライシングの代表例は「エネルギー課税」と「固定価格買取制度(FIT)」の2つです。

エネルギー課税は、エネルギーの消費量に応じて課税されるものです。たとえばガソリン税や石油ガス税、軽油引取税などが該当します。

固定価格買取制度(FIT)は、太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスといった再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定の期間、一定の価格で買い取る制度です。再生可能エネルギーで発電した電気を買い取るための費用は、各電力会社が捻出しているのではなく、利用者の電気料金に「再エネ賦課金」として上乗せされています。

固定価格買取制度については、「固定価格買取制度(改正FIT法)とは?太陽光発電の売電についてわかりやすく解説」に詳しくまとめましたので、あわせてご覧ください。

カーボンプライシングの世界の導入状況

先述の通り、カーボンプライシングは2021年4月の段階で64の国と地域で導入しており、81カ国が導入を検討しています。

カーボンプライシングを導入すると、エネルギーコストが上昇し経済に悪影響があると思われるかもしれません。しかし、炭素税を導入している国の多くは、経済成長を実現しつつ、その政策の目的である二酸化炭素排出の削減を達成しています。

経済成長と二酸化炭素削減を両立したひとつの例として、カナダのブリティッシュ・コロンビア州を紹介します。ブリティッシュ・コロンビア州では、2008年に炭素税を導入し、2011年にかけて温室効果ガスの排出量を約10%削減しました。これは同時期のカナダの他州と比べると約8.9%も高い割合になります。炭素税の導入により、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出が大きく抑制され、地球温暖化対策がすすんだと言えます。

経済面で見ると、ブリティッシュ・コロンビア州のGDPは、2008年から2011年にかけて他州とほぼ同様に推移しただけでなく、期間全体で見ると、わずかに他州を上回りました。二酸化炭素の排出削減と経済成長を両立させた好例となっています。

日本のカーボンプライシングの状況は?

日本でも「地球温暖化対策のための税(地球温暖化対策税)」という名称で2012年から実質的な炭素税が導入されています。現在は二酸化炭素の排出量1トン当たり289円を各企業が税として負担することで、最近では年間で2,500億円程度の税収があります。

現在の1トンあたり289円という税制は平成24年10月から平成28年4月にかけて段階的に引き上げられたもので、導入当初と比較すると約3倍の価格になっています。しかし、炭素税を定めている諸外国に比べて価格設定は低く、例えばスウェーデンでは1トンあたり119EUR(約15,000円)と、日本の52倍の価格に設定されています。

「排出量取引制度」は、日本でも東京都や埼玉県ですでに運用されています。工場やビルを所有する企業のうち、電気やガスなどのエネルギー使用量が原油換算で年間1,500キロリットルを超えると業種の制限なく課税対象となります。

再生可能エネルギー

対象企業には事業所ごとにエネルギー使用量の上限が設定され、それを超えた場合には、排出量に余裕のある他の企業から排出枠を買い取る仕組みになっています。この際のやり取りは企業間で直接行うのではなく自治体が運営するサイトを仲介する必要があります。

しかし、日本でカーボンプライシングが導入されているとは言っても、まだまだ本格化しているとは言えません。カーボンプライシングは環境だけでなく経済にも関わることなので、日本では環境省と経済産業省が並行して検討していく必要があり、本格化されるには時間がかかります。

インターナルカーボンプライシングとは?

あえて企業が独自にインターナルカーボンプライシングを行う目的は、二酸化炭素排出量の価値を見える化することで、削減目標を設定しやすくして企業活動を意図的に低炭素に変化させることです。また「将来的に起こりうる低炭素規制への準備」、「投資家・評価機関へのアピール」もインターナルカーボンプライシングを行う理由となっています。

国や自治体が主導して行う二酸化炭素削減のためのカーボンプライシングとは別に、企業内で独自に二酸化炭素排出量に価格をつけていることがあります。これをインターナルカーボンプライシングと言います。

インターナルカーボンプライシングを行うことで、企業が二酸化炭素を1トン削減するために、どれくらいコストをかける価値があると判断しているかの指標になります。つまり、インターナルカーボンプライシングで、二酸化炭素排出量にいくらの価格がつけられるかによって、その企業がどれくらい低炭素化に力を入れているかが分かります。

二酸化炭素の削減を考える

日本における社内カーボンプライシング制度の導入事例

日本国内においては、三井物産がGHGを多く排出する事業の中長期的なレジリエンスを高めるため、またGHG排出削減に効果のある事業の取り組みを促進するため、2020年4月より社内カーボンプライシング制度を導入しています。新規事業案件については、GHG規制などがリスクあるいは機会となり得る案件につき、2℃シナリオに進んだ場合に生じる影響の分析、ならびにリスクとなる場合には対策などの妥当性が、案件審査の一要素として追加されたとのことです。また、既存事業のリスク評価も社内カーボンプライシング制度を使って実施するそうです。

このように国単位や企業単位でのカーボンプライシング制度の導入が始まっていますが、本格的に導入するとなると価格や税率をどう設定するのか、各組織に対する上限をどのように公平に設定するのかといった問題があります。とはいえ2050年へのカーボンニュートラルへ向けては迅速な対応は必須で、今後どのように制度が作られていくのかが注目されます。

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