カーボン・オフセットとは?必要性や企業の取り組み事例をわかりやすく解説
2020.11.17

カーボン・オフセットは、地球温暖化を防止するために、経済活動や日常生活で排出される温室効果ガスを削減しようとする考え方、あるいはそのような活動の一つです。
できるだけ温室効果ガスの削減努力をしたうえで、削減しきれない分の二酸化炭素などは、植林や森林保護、それらの事業への投資、排出権の取引などによって埋め合わせます。
この記事では、カーボン・オフセットとは何か、メリットや問題点、どのような形態があるか、実際の事例についてくわしくまとめます。
カーボン・オフセットとは?
カーボン・オフセットとは、二酸化炭素など温室効果ガスの排出に関する考え方の一つです。
まず、個人や企業、政府などは、日常生活や経済活動の中で、できるだけ温室効果ガスを削減する努力を行います。
しかし、日常生活や経済活動を行っている限り、どうしても削りきれない部分はでてきます。
そこで、避けることができない温室効果ガスの排出については、植林や森林保護など温室効果ガスの削減活動に投資することや、他の団体が削減した分を購入することでオフセット(埋め合わせ)します。
このような考え方をカーボン・オフセットといいます。
カーボン・オフセットは1997年、イギリスのNPO団体の取り組みから始まり、アメリカ・ヨーロッパを中心に活発に行われています。
カーボン・オフセットはなぜ必要なの?メリットと問題点
地球温暖化により、地球全体の気温が上昇し、南極や北極の氷が解けたことによる海面の上昇や、気候変動による異常気象が世界中で報告されています。
地球温暖化の原因は、個人の生活や企業・国家の経済活動により排出された、二酸化炭素などの温室効果ガスといわれています。
無秩序に経済活動等を進めることで地球温暖化が進めば、さらなる海面上昇や異常気象、気候変化による生態系の変化に見舞われる危険があるため、地球全体の温室効果ガスを適切な量に調整し、バランスに保つことが重要です。
これは、一部の国や地域だけ取り組めばよい問題ではなく、世界各国が温室効果ガスの削減努力をする必要があるということです。
『気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による第五次評価報告書(AR5)』において、地球温暖化を2℃未満に抑制するためには、2010年と比べて2050年までに温室効果ガスを40%から70%削減しなければならない旨が発表されました。

温暖化を抑制するために、各国が温室効果ガスの排出量を削減する努力をしていますが、どうしても削減できない部分がでてきます。
この部分をカーボン・オフセットにより二酸化炭素排出量の埋め合わせをすることで、経済活動と地球温暖化の防止を両立することができます。また、カーボン・オフセットの過程で二酸化炭素排出量の算定をするため、しっかりとした数値目標ができるのも良い点です。
さらに、定められた二酸化炭素の排出権を取引することで、技術力や労力によって排出量を削減できた場合、余った排出権を売却し利益を出すことができます。
一方、この排出権を取引する考え方は、利益さえ上げていれば排出量を削減する努力をせずとも他の団体から排出権を購入すればよい、という意識を助長する恐れもあります。さらに言えば、経済力が二酸化炭素を排出できる量を決めるような社会となり、不平等を生む危険性があります。
カーボン・オフセットの代表的な取り組み
カーボン・オフセットに参加する取り組みは様々な形態があります。
製品を製造する企業が、温室効果ガス削減・吸収プロジェクトに投資する方法や、製品に温室効果ガスの排出枠分の料金を上乗せする方法、寄付を募る方法などです。
以下では、カーボン・オフセットの代表的な取り組みについて5つ紹介します。
取り組み①オフセット製品・サービス
製造業や販売業の企業は、商品の製造をする際や販売の際に、工場や店舗の稼働、製造の際の化学反応等により二酸化炭素を排出します。
あるいは商品やサービスを消費する際に、温室効果ガスを排出するかもしれません。
このように、製品を製造・販売に関わるライフサイクルを通じて排出される温室効果ガス排出量分を、企業の投資活動などによってオフセットします。

取り組み②会議・イベントのオフセット
国際会議やコンサート、スポーツ大会などのイベントで排出される温室効果ガスを、イベントの主催者がオフセットします。

取り組み③自己活動オフセット
個人や組織の事業活動で排出される温室効果ガスを直接オフセットできるのが「自己活動オフセット」の考え方です。
植林プロジェクトなどによって温室効果ガスの削減努力に貢献した団体が、排出枠を販売し、その排出枠を個人や団体が購入することで、その個人や団体が排出した分の温室効果ガスを埋め合わせることができます。

取り組み④クレジット付き商品・サービス
クレジット付き商品・サービスにおけるカーボン・オフセットは、消費者の日常生活における温室効果ガス排出のオフセットを支援する取り組みです。
クレジットとは、二酸化炭素の排出枠のことで、上記の「自己活動オフセット」はクレジットのやり取りをしていると言えます。
商品やサービスを製造・販売する企業等やイベントの主催者は、それぞれが提供する商品やサービス、チケットにクレジットを付します。
商品やサービスの消費者、イベントの来場者がクレジット付の商品やサービスを購入することで、消費者の日常生活で排出される温室効果ガスをオフセットします。

取り組み⑤寄付型オフセット
寄付型オフセットは、製造者やサービスの提供者、イベントの主催者等が、クレジットの購入のために資金提供を募り、消費者がその活動に参加することでオフセットする仕組みです。
企業などは消費者から集めた資金をもって、クレジットの購入や温室効果ガスの削減・吸収プロジェクトに参加します。

カーボン・オフセットの企業事例をご紹介
カーボン・オフセットの取り組みは、国内外で活発に実施されています。
例えば、カナダ政府はCOP8やCOP9に参加する際には、カナダ国内の排出削減・吸収プロジェクトに投資することで、会議出席に伴って排出する二酸化炭素排出分をオフセットしています。
日本国内でも、株式会社ファミリーマートは、「We Love Green」という環境配慮型のプライベートブランドの製造、廃棄等に係る239tの二酸化炭素排出をオフセットしています。
また、株式会社ローソンは、1口50ポイントの「Ponta」ポイントで、10kgをオフセットするサービスを展開しています。
ヤフー株式会社では、オフィスやデータセンターで前年分に排出された二酸化炭素分を、オフセットしています。
ここで取り上げた日本国内の事例は、平成23年の「第1回カーボン・オフセット大賞」にノミネートされた取り組みで、他にも多くの企業、山口県宇部市、神奈川県横浜市などの自治体もノミネートされています。
この記事では、カーボン・オフセットについて詳しくまとめました。
カーボン・オフセットは、温室効果ガスの削減努力をしたうえで、経済活動や日常生活で排出した温室効果ガスを植林や森林保護活動、またはそれらの活動に出資することで埋め合わせる考え方です。
環境省がカーボン・オフセットのガイドラインを発表するなど、実際に多くの企業や団体がカーボン・オフセットを実施しており、その動きは日本でも活発です。