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排出量取引とは?メリットや今後の課題をわかりやすく解説!

公開:2021年05月31日
更新:2022年10月04日

排出量取引とは、京都議定書第17条に定められた京都メカニズムの1つであり、先進国間で排出枠等を売買する制度です。

この記事では、排出量取引とは何か、排出量取引の流れ、メリット・デメリット、取り組み事例などについてまとめます。

排出量取引とは

排出量取引とは、温室効果ガスの削減をより容易にする制度のひとつで、国や企業ごとに定めた温室効果ガスの排出枠を取引する制度です。

排出量取引では、国や企業ごとに温室効果ガスの排出枠(キャップ)を設けます。その排出枠を超えて温室効果ガスを排出した国や企業は、排出枠が余った国や企業から、その排出枠を購入することができます。

この排出枠の取引を「排出量取引」または「排出権取引」と言います。

国や企業によって温室効果ガスの排出量や削減余力はまちまちですから、これを取引することで平準化し、全体で温室効果ガスの排出量を削減していくことが排出権取引の狙いです。

また、排出量取引は、炭素に価格を付け、その経済的なインセンティブによって温室効果ガスの削減を促す「カーボンプライシング」の手法の一つです。

カーボンプライシングについて詳しくは「カーボンプライシングとは?その概要と日本の導入状況を詳しく解説」をご参照ください。

排出量取引の方式

排出量取引は、国や企業ごとに排出枠(キャップ)を定め、その排出枠を取引(トレード)することから、「キャップアンドトレード」と呼ばれます。

京都議定書の第17条に規定された京都メカニズムのひとつであり、国が制度を設計・運用し、企業等がそれに準ずる規制対応的な側面が強いものです。

排出量取引制度は、EUやカナダが導入する一方、日本では導入しておらず、東京都や埼玉県が都道府県単位で導入している状況です。

CO2排出量を取引する方法としては、ベースラインアンドクレジットと呼ばれる方法が主流となっています。「ベースラインアンドクレジット」とは、削減努力をしない場合の温室効果ガス排出量を基準(ベースライン)として、ベースラインから追加で削減した温室効果ガスをクレジット化して売買する方法です。規制対応的な側面が強いキャップアンドドレードに対し、ベースラインアンドクレジットは、民間企業等が自発的に取引を行うことができるものとなっています。

クレジット取引については、「J-クレジット制度とは?メリットや価格の相場をわかりやすく解説」で詳しく解説しています。

排出量取引の流れ

キャップアンドトレードによる排出量取引の流れについては、大きく分けて以下の4つになります。

1.目標設定

まず温室効果ガスの削減目標を定めます。国や部門全体での温室効果ガスの排出削減量を目標として設定します。例えば、2020年に「2018年を基準として10%削減する」といった目標を定めた場合は、2018年における排出量の90%が、全体の排出枠となります。

2.国や部門ごとに排出量を排出枠として分配する

国や部門全体の排出枠が決まったら、各企業や事務所にそれを分配します。代表的な分配方法は「グランドファザリング方式」、「ベンチマーク方式」、「オークション方式」です。

グランドファザリング方式は、対象企業や施設の温室効果ガス排出実績に応じて、排出枠を設定する方式です。

この分配方式では、温室効果ガス排出量が多いほど、多くの排出枠をもらえるため、公正な削減努力を促さないことが問題として指摘されています。排出枠の認定やチェック機構が未成熟な時期に取り入れられた方式であり、漸減・撤廃が進められています。

ベンチマーク方式は、「ベンチマーク(基準)」を定めて、ベンチマークに基づいて排出枠を決定する方式です。

排出枠におけるベンチマークとは、原単位(生産量あたりのCO2排出量」に基準を設け、企業ごとに割り当てる生産枠を乗じて排出枠を設定する方法です。ベンチマーク方式は公正な排出量削減努力を促しますが、原単位や生産枠のチェックや査定が必要になります。

オークション方式は、企業や施設がオークションで排出枠を購入する方式です。グランドファザリング方式やベンチマーク方式では無償で排出枠を交付されますが、オークション方式では有償で排出枠を購入します。つまり、資金に余裕があれば排出枠に限度がなくなります。

3.取引をする

それぞれの企業や施設が温室効果ガスの削減努力をした結果、排出枠と実際の排出量に差異が生じます。削減量が足りず、排出枠を超えて温室効果ガスを排出する企業もありますが、削減努力が実り、排出枠に余裕がある企業もでてきます。

このとき、排出枠を超えてしまった企業は、排出枠に余裕がある企業などから、排出枠を購入します。

4.取引枠・量の確認

一定の期間が過ぎたら、それぞれの企業や施設に定められた排出枠と、実際の排出量を確認します。

排出枠よりも実際の排出量が少なければ問題ありませんが、排出枠を超えて温室効果ガスを排出してしまった企業や施設には罰則が科せられます。

排出量取引のメリットや課題は?

ここからは、排出量取引のメリットや課題について解説します。

メリット

排出量取引では、設定された排出枠以上に温室効果ガスの排出を削減すれば、その削減分を販売することで経済的なメリットを得ることができます。これが温室効果ガスを削減する動機づけとなります。

また、削減目標があらかじめ設定されるため、温室効果ガスの削減計画を立てやすいこともメリットのひとつです。

課題・問題点

排出量取引は、公平性のある排出枠の設定が難しい点が問題です。

また、排出枠は一般に、先進国にとっては厳しい制限となり、発展途上国にとっては緩い制限となるため、厳しい先進国で温室効果ガスの削減努力をするよりも、発展途上国で事業活動を行うほうが良いということで、企業が排出規制の緩い国へ移転してしまい、温室効果ガスの排出量を結果的に増やしてしまうケースがあります。これをカーボンリーゲージ問題といいます。

排出量取引の日本の現状

日本では温室効果ガスの排出低減に向け、政府や様々な企業・団体が取り組みを行っていますが、排出量取引は国として導入はしていません。ただ、一部の自治体が地球温暖化対策の一つとして、排出量取引を導入しています。

事例1:東京都「温室効果ガス排出総量削減義務と排出量取引制度」

東京都は2010年4月から「温室効果ガス排出総量削減義務と排出量取引制度」を導入しました。

2010年~2014年度を第1計画期間、2015年~2019年度を第2計画期間とし、業務生産部門においてそれぞれ8%または6%、17%または15%の削減義務率を設け、総量削減目標は「2020年までに2000年比の25%削減」としています。

事例2:埼玉県「目標設定型排出量取引制度」

埼玉県も東京都と連携して「目標設定型排出量取引制度」を導入し、制度の普及に努めています。

東京都と同様の第1計画期間、第2計画期間を設定し、事業所単位で第1計画期間には8%または6%、第2計画期間には15%または13%の削減義務率を設け、埼玉県の総量削減目標は「2020年度に2005年比の21%削減」としています。


排出量取引制度は、排出枠の取引を通して経済的なインセンティブを与え、国や企業の温室効果ガス削減努力を促します。カーボンニュートラル実現のための手段の一つとして、制度設計や適正な排出枠分配の難しさを克服し、制度がより普及していくことが望まれます。

世界の情勢を鑑みるに、「温室効果ガスの排出削減量を取引すること」は活発になってきています。「排出量取引」や「クレジット取引」を脱炭素化の取組みの一つとして検討してみるのはいかがでしょうか。

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